初稿から良質なアウトプットを引き出すための執筆依頼術
2024/04/24
コンテンツマーケティングに携わる方であれば、誰しも一度はこんな悩みに直面したことがあるだろう。
「ライターの方に執筆を依頼しているが、企画意図に沿った内容で作成してもらえず、修正作業が負担になっている」
このような悩みを抱えた状態では、コンテンツマーケティングで高い成果を生み出すことは難しい。良質なコンテンツを安定的に生産し、ターゲットとする読者に届けられるようになってはじめて成果が生まれる。
本記事では、ライターのパフォーマンスを最大化し、初稿から良質なコンテンツを引き出すための執筆依頼術について解説する。
※コンテンツマーケターにとって耳が痛い内容を含みます。ご注意ください
※本記事の内容は、ある程度スキルがあるライターと契約できていることを前提としています
「良質なコンテンツ」の定義
「ライターが作成した原稿の品質が低い」とこぼす前に、今一度考えてみてほしい。
「自社は”良質なコンテンツ”の定義を明確化し、正しく伝えられているのか?」
コンテンツマーケターの話を聞く限り、自社メディアでの”良質なコンテンツ”の定義を明文化できている会社は少ない。企画・編集担当者の頭のなかに漠然とした基準があったとしても、明文化できていなければ無いのと同じだ。
ライターに良質なコンテンツ原稿の作成を求めるのであれば、自社は何をもって「良質」だと判断しているかを示す必要がある。
Googleによる定義
コンテンツは必ずしも検索流入を狙って制作するわけではないが、主要な検索エンジンであるGoogleの意向は見逃せない。
Google社は英文で『検索品質ガイドライン』を公開している。内容を要約すると、Googleはコンテンツを評価するうえで以下3つを重要視している。
需要との一致(Needs Met)
ページ品質(Page Quality)
使いやすさ(Usability)
需要との一致(Needs Met)
Googleは世界トップの検索エンジンを提供する身として「検索ユーザーが求めていることに対して適切に回答すること」を重要視している。そのため、ユーザーの検索意図に対して適切に回答しているコンテンツを高評価する。
例えば「コンテンツマーケティング BtoB」と検索するユーザーは、以下のようなニーズを抱えていると考えられる。
BtoBにおけるコンテンツマーケティングの基本的な概念や定義を知りたい
BtoBでコンテンツマーケティングを実践する際の戦略や手法を学びたい
BtoBのコンテンツマーケティング事例や成功例を参考にしたい
BtoBとBtoCのコンテンツマーケティングの違いを理解したい
BtoBのコンテンツマーケティングを実践する上での課題やポイントを知りたい
上記のニーズに応えるコンテンツには、以下のような情報を盛り込むと良い。
BtoBコンテンツマーケティングの定義と目的
BtoBコンテンツマーケティングの戦略と手法
BtoBコンテンツマーケティングの事例と成功のポイント
BtoBとBtoCのコンテンツマーケティングの違い
BtoBコンテンツマーケティングの課題と対策
ページ品質(Page Quality)
ページ品質を考えるうえで外せないのが、「E-E-A-T」という概念だ。E-E-A-Tとは、以下4つの頭文字を取った造語である。
Experience(経験)
Expertise(専門性)
Authoritativeness(権威性)
Trustworthiness(信頼性)
Googleは元々「E-A-T(専門性・権威性・信頼性)」を重要視していると打ち出していた。しかし、2022年12月に検索評価ガイドラインを更新し、「Experience(経験)」を追加して「E-E-A-T」とした。
「Experience(経験)」が追加された背景には、生成AIによるコンテンツの大量生産がある。
生成AIが生み出すテキストは、もはや人間が作成したものと区別がつかないレベルに達している。しかし、実際の経験をもとにした一次情報を含めることはできない。
一次情報を含まないコンテンツで検索上位が埋め尽くされると、ユーザーはGoogleに対して「間違ってはいないが、役には立たないコンテンツをおすすめするサービス」という認識を持ってしまう。その認識が広まり、Google離れが起こることを恐れていると推測できる。
そうならないよう、実際に体験して得た一次情報を含むコンテンツを高く評価している。
使いやすさ(Usability)
Googleは、ユーザーが当該ページをストレスなく利用できるかを評価している。「使いやすさ」に正解はないが、Webページが以下のような状態になっている場合は見直す必要があるだろう。
コンテンツの読み込みを阻害するバナーが表示される
コンテンツ内に必要以上にCTA(Call To Action)が挿入されている
サイトが表示されるまでに時間がかかる(Page Speed Insightsで確認)
PC、タブレット、スマホのいずれかで閲覧すると見づらい
画像を拡大しない見れない
使いやすさを改善するうえで重要なことは「データだけに頼らないこと」だ。データドリブンな意思決定は推奨されるべきだが、「データに表れていないから手を打たない」となると真に使いやすいWebサイトにはならない。ユーザー目線で自社サイトを利用し、不満を感じるところは即座に改善しよう。
グロースソイルでの定義
グロースソイルでは、「良いコンテンツ」を以下の通り定義している。
企画
誰に届けたいのかが明確である
“読者”にとって価値がある内容になっている
骨子
見出しの階層が整理されている
読者が最も知りたいことに対して初めに回答している
文章表現
主語・述語が明確である
助詞を正しく使用できている
一文を50字程度に抑えられている
同じ文末表現が連続していない
文章を音読してもリズムよく読める
心構え
自社のブランド価値向上に寄与する内容になっている
執筆者自身がそのコンテンツのファンになる
「良いコンテンツ」の定義はメディアによって異なる。自社では何をもって「良いコンテンツ」と判断するのか、明文化しておくとライターとのコミュニケーションをスムーズに進められる。
関連記事:コンテンツの良し悪しは何で決まるのか
ディレクターとライターが認識をあわせてコンテンツマーケティングを進めていくには、コンテンツPlaybookをつくると良い。
コンテンツPlaybookとは、過去の経験や現在の潮流をもとに”良いコンテンツ”の定義を記し、良いコンテンツを生み出す秘訣をまとめた指南書のこと。同じ文書の内容を全員が理解することで、コンテンツ制作の歯車が噛み合うようになる。
「ライターの方に執筆を依頼しているが、企画意図に沿った内容で作成してもらえず、修正作業が負担になっている」
と悩んでいる方には、コンテンツPlaybookを作成・共有し、常に最新の状態に更新し続けることをおすすめする。Playbookを通じてコンテンツマーケティング推進の前提を共有することで、ライターは初手から良質なコンテンツ原稿を出せるようになる。
コンテンツPlaybookの構成要素
グロースソイルでは、自社のコンテンツマーケティングに関わる方全員が目を通すコンテンツPlaybookを運用している。

ここでは、コンテンツPlaybookに記載すべき構成要素について解説する。
自社サービス概要
「コンテンツを通じてMQLおよび商談を創出したい」と考えるのであれば、ライターにも自社サービスについて伝える必要がある。コンテンツPlaybookのなかで自社サービスが誰に、何の価値を、どのように提供するものなのか簡潔に説明する。
メディアの目的と目標
メディアとして、何を目的・目標として活動するのかを明示する。メディアの目的と目標を明示することで、ライターは企画の意図を把握しやすくなる。その結果、制作を進めるうえでの認識の齟齬を最小限に抑えられる。

メディアの目的は、「顧客目線」と「自社目線」の2つを決めると良い。
自社目線の目的だけを決めてしまうと本質的に価値あるコンテンツを生み出せない。一方、顧客目線の目的だけを置いても事業成長につなげられない、といった問題が起こる。
コンテンツを通じて顧客に価値を届け、事業を成長させるためにも、目的は2つの目線で定義しよう。
ターゲット市場
自社がターゲットとしている市場を明記する。
ターゲット市場を明記するうえで、「会社としてのターゲット」「事業としてのターゲット」「メディアとしてのターゲット」は必ずしも一致しないということに注意する必要がある。
例えば、とあるFintech企業は中規模以上の企業には営業がアプローチし、中小規模法人・個人事業主へのアプローチはデジタルマーケティングで完結させている。この場合、当企業としては顧客の企業規模は問わないが、デジタルマーケティングチームのターゲットは中小規模法人・個人事業主となる。
デジタルマーケティングを通じてコンテンツを届けるべきターゲットはどのような企業なのか、明文化しておくとコミュニケーションを円滑に進められる。
ターゲットオーディエンス・バイヤーペルソナ
ターゲット企業のなかで、接触すべき人を属性情報で抽象化したものをターゲットオーディエンスという。

ターゲット市場は企業単位、ターゲットオーディエンスとバイヤーペルソナは人単位という違いがある。また、ターゲットオーディエンスは抽象化した人の属性情報であるのに対し、バイヤーペルソナは具体的なひとりの人物である。
ターゲットオーディエンスとバイヤーペルソナを用意することで、コンテンツをより深い内容にしつつ、広く届けられる。
重点的に発信するテーマ
重点的に発信するテーマは、メッセージハウスを作成することで整理できる。

オウンドメディアは特定のターゲット層に対し、特定のテーマで発信し続けることで広がっていく。特定のテーマに絞ることで、「○○といったら××社」という第一想起を取れる、ライターが迷いなくコンテンツを作れるといったメリットがある。
参考ページ:Get the Message House Toolkit For Free!|message house
記事作成フォーマット
コンテンツ企画で押さえるべき要素を漏れなく押さえつつ、効率的に記事制作を進めるためにフォーマットを用意すると良い。
記事作成フォーマットは、記事形式ごとに作成するのが望ましい。
グロースソイルでは、以下2つの記事形式にあわせてフォーマットを作成している。
ナレッジブログ記事
事例記事
どのようなコンテンツを制作しているかは企業によって異なる。自社のコンテンツを一通り網羅できるようにフォーマットを用意し、ライターに共有しておくと、企画・執筆依頼をスムーズに進められるようになる。
執筆ガイドライン
コンテンツPlaybookには、記事を執筆するうえで押さえてほしいポイントを記載する。メディアを通じて守ってほしいルールを明記することで、編集・校正の工数を格段に圧縮できる。
押さえてほしいSEO
SEOはやればやるほど良いかと言えば、必ずしもそうではない。コンテンツ制作時にSEOのことを考え過ぎるあまり、陳腐な内容になってしまうことは多々ある。
どこまでのSEOを求めるかはメディアによって異なり、参画して間もないライターが迷うポイントとしてよく挙げられる。ライターが迷わずに済むよう、自社メディアではどのようなSEOを押さえて記事を執筆してほしいのか明記するとよい。
グロースソイルでは、以下のSEOのみおこない、そのほかのことは考えずにコンテンツ品質向上に集中してほしいと伝えている。
押さえておいてほしいSEO
ターゲットキーワードを決める
ターゲットキーワードをタイトルに入れる
ターゲットキーワードをh2に少なくとも1つは入れる
ターゲットキーワードで検索したユーザーが知りたいことに対し、一番初めのh2で回答する
5,000字以上書く(無駄に引き延ばすのではなく、骨子の組み方で調整する)
メタディスクリプションにターゲットキーワードを入れる
『原点回帰で考える「コンテンツマーケティング」とは』記事への内部リンクを設置する
文体
文体とは、文章の様式のこと。トンマナと表現されることもある。メディアとして、文体が統一されている方が望ましいとされるのが一般的である。そのため、多くの企業では文体を指定している。
文体には、以下のようなものがある。
文体 | 例 |
|---|---|
ですます調(敬体) | コンテンツマーケティングは、潜在顧客との信頼関係を築くための重要な活動です。特にBtoBの場合、購買決定プロセスが長く、複数の意思決定者が関与するため、適切なコンテンツを提供することが必要不可欠です。 |
である調(常体) | BtoBのコンテンツマーケティングにおいては、ターゲット企業のニーズや課題を深く理解することが重要である。そのうえで、専門性の高い有益なコンテンツを提供し、自社の製品やサービスの価値を効果的に伝えていく必要がある。 |
著者視点 | 私がBtoBのコンテンツマーケティングを実践する中で気づいたのは、コンテンツの質の重要性だ。ターゲット企業の担当者は、自社の課題解決に役立つ情報を求めている。そのため、独自の知見や事例に基づいた、説得力のあるコンテンツを創出することが成功への鍵を握っている。 |
主人公視点 | 私は、BtoB企業のマーケティング担当者だ。日々、潜在顧客との信頼関係を築くために、コンテンツマーケティングに取り組んでいる。ホワイトペーパーやウェビナーなどを通じて、専門性の高い情報を提供し、自社の価値を伝えることに注力している。 |
口語体(話し言葉) | ねえ、BtoBのコンテンツマーケティングって大変だよね。でも、ちゃんとターゲットの企業が抱えている問題について理解して、役に立つ情報を提供すれば、きっと信頼してもらえるはずだよ。事例も交えながら、分かりやすく伝えることが大事だと思うな。 |
文語体(書き言葉) | BtoBにおけるコンテンツマーケティングは、潜在顧客との信頼関係の構築につながる。特に、購買決定プロセスが長きにわたり、複数の意思決定者が関与する場合、適切なコンテンツの提供は必要不可欠。自社の製品やサービスの価値を効果的に伝えるため、専門性の高い有益なコンテンツを生み出すことが重要だろう。 |
しかし、文体を統一することで著者の個性を消してしまう場合もある。メディアとしての統一感を取るべきか、一人ひとりの個性を残すべきかはメディアの方針によって変わる。
表記ルール
同じものごとについて記載するときは、同じ表現をした方が読者は内容を理解しやすい。そのため、表記ルールを指定しておくと良い。
表記ルールには、自社メディアで使用することが多い一般語のほか、自社独自の語彙(社名など)についても記載する。そうすることでメディア全体での表現が整い、意味を理解しやすいコンテンツを生み出せるようになる。
表記ルールの例
使用する表現 | 使用しない表現 |
|---|---|
Webサイト | Web、Website、ウェブ、ホームページ |
アプリ | アプリケーション、アプリソフト |
ソフトウェア | ソフト |
インターネット | internet、Internet |
メールアドレス | メアド、e-mail |
ユーザー | ユーザ、user |
コンピューター | コンピュータ、パソコン、PC |
サーバー | サーバ |
データベース | Database、DB |
スマートフォン | スマホ、Smartphone |
著作権など法的事項への対応
メディアを運営するうえで、他社の著作権を無意識に侵害しないよう細心の注意を払う必要がある。著作権法では、以下のようなものが著作物として例示されている。
著作権法第10条(著作物の例示)
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
上記に該当するものを引用する場合、以下5点に対応する必要がある。
引用部分を明示する
引用元を明示する
自分の著作部分と引用する著作物の主従関係を明確にする
他人の著作物を引用する必然性がある場合のみ引用する
引用部分を改変しない
上記5つを満たすために、他社の著作物を引用する際どのように対応すべきか明記する。
執筆依頼書の構成要素
ここでは、ライターに渡す執筆依頼書を構成する要素について解説する。
『企画書&原稿テンプレート』を見る(フォーム入力なし)
※Googleドキュメントをコピーしてご利用ください
執筆依頼時に渡すものは、大きく以下2つに分けられる。
前提情報
骨子
前提情報
ライターに記事執筆を依頼する際、前提情報をどれだけ詳細に伝えられるかがアウトプットの質に直結する。
どの程度の前提情報を提供すべきかは、企画の複雑さやライターの経験値、関係性など様々な要因によって左右される。グロースソイルでは、以下の情報をはじめに提供している。
企画概要
企画の目的
想定読者
読者の悩み
読者のゴール
読者に伝えたいメッセージ
コンテンツ形式
CTA
流入チャネル
ターゲットキーワード
月間検索数
想定文字数
参考資料
ライターが情報のインプットおよび執筆を迷いなくできるよう、ディレクター側も十分な情報を提供しよう。
骨子
骨子はディレクター側が作成する場合もあれば、ライター側で執筆する場合もある。重要なのは、骨子の段階で記事の方向性について合意を形成することだ。
「思ったような原稿が上がってこない」という問題は、骨子の段階で合意形成することで多くの場合は解消できる。経験上、骨子の段階で合意形成してから進める方がディレクター・ライターともに気持ちよく仕事を進められ、アウトプットの質も高いものになる。
楽は苦の種苦は楽の種
「楽は苦の種苦は楽の種」とは、水戸黄門のモデルにもなった徳川光圀の言葉である。
ライターのパフォーマンスを最大限引き出すには、ディレクター側が必要な情報を詳細に伝える必要がある。メディア全体の方針や決めごとをコンテンツPlaybookに落とし込み、コンテンツ単位での企画意図等を執筆依頼書に落とし込む。これらを共有することで、ライターはディレクターの意図を正しく理解でき、事業成長に寄与するコンテンツを納品できるようになる。
コンテンツマーケティングで成果を上げるために必要な情報を詳細に記し、伝えることがディレクターには求められる。面倒に思ってしまうこともあるかもしれないが、「楽は苦の種苦は楽の種」という言葉を胸に、一度取り組んでみてほしい。
この記事の執筆者
株式会社グロースソイル
代表取締役
髙橋 航平
Adobe Marketo Engageの導入支援会社にてコンテンツ編集長を務めたのち、2024年に株式会社グロースソイルを創業。
ナーチャリングに特化して、マーケティング支援サービスを展開。独自のナーチャリングモデル『アクションナーチャリング』をもとに、BtoB企業に顧客指向のナーチャリングを実装している。


