効果測定を放棄すると、ナーチャリングの打ち手が広がる
2026/05/10
「計測できないものには投資できない」。この判断は一見まともに見えますが、BtoBのナーチャリングにそのまま当てはめると、施策の選択肢を自ら狭める結果になります。
ナーチャリングに悩む担当者も、予算を承認する責任者も、多くの場合この問いにぶつかります。計測できる範囲で設計したナーチャリングが成果を出せない理由と、その思考から抜け出す具体的な方法を整理します。
ハウスリスト内だけのナーチャリングが抱える構造的な限界
お客様の行動の大半は、ハウスリストの外側にある
計測できる範囲でナーチャリングを設計しようとすると、自然とファーストパーティデータ、つまり自社のハウスリストに基づいた施策に収束していきます。リードを集めて、メルマガやウェビナーでナーチャリングして、商談化させる。このリードベースドマーケティングの流れ自体は間違いではありません。しかし、ここには根本的な問題があります。
お客様は、ハウスリストに登録してから購買検討を始めるわけではありません。
グロースソイルでも、ポッドキャストリスナーの方から熱量の高いお問い合わせをいただくことがあります。そのお客様はお問い合わせの瞬間が初回のリードインでした。この方は、ハウスリストのデータだけを見れば「存在しない」ことになります。しかし、自社の気付かぬところで自社のコンテンツを消費し、関心を高めてくれています。
計測データを軸に施策を評価していると、ハウスリスト外で起きているナーチャリングの効果が丸ごと見えなくなってしまうのです。

ハウスリスト外リード向けの施策が「投資対象外」になる
SNS、ポッドキャスト、外部イベント。これらのチャネルはナーチャリング施策として認識されず、ブランディングの一環として語られることも多いです。インプレッション数やフォロワー数は見ても、それがナーチャリングの進捗としてカウントされることはほとんどありません。
結果として起きるのは、「計測できないから予算化できない」という問題。計測できないものへの投資を止めると、ナーチャリング施策はハウスリスト内に閉じていきます。ハウスリスト内の施策だけでは成果が出にくい。だから集客広告にコストをかけ続ける。このサイクルを脱せなくなります。
グロースソイルが2025年末に実施した『BtoBマーケティング責任者のナーチャリング実態調査2026』では、93.2%の方が直近3年間でリード獲得コストが上昇したと回答しています。
計測できる範囲の施策だけに頼り続けるマーケティングは、年々苦しくなっています。
KPIを細かく持つほど、打ち手が狭まる
中間KPI達成が目的化するリスク
多くの組織では、KGIである商談数や受注数の手前に、中間KPIとしてリード獲得数やMQL数を設定しています。この設計自体は進捗管理として機能しますが、問題は「中間KPIの達成も必達」になることです。
リード獲得数を必達KPIに置くと、リード流入に直結する施策(広告、共催セミナーなど)への投資が優先され、それに紐づかないSNSやポッドキャストへの投資判断は後回しになります。数字の責任を持つ立場なら当然の判断ですが、その結果計測しやすい施策だけが積み重なり、打ち手の多様性が失われていきます。

必達はKGIのみ、残りはモニタリング指標に留める
打ち手を広げるためにやるべきことは至ってシンプル。必達として追うのはKGI(商談数)のみとし、その他の指標はモニタリングに留めるという方針です。
ただし、これをそのまま組織に持ち込むのは現実的ではないことも多いでしょう。「数字を出せないなら承認できない」という壁にぶつかります。そこで有効なのが、後述するアクションナーチャリングのステージモデルを使ったKPI設計です。ハウスリスト内のリードに対しては「ステージ遷移数の上昇」をKPIとして置き、KGIである商談数との論理的な関係を示します。これにより、個別施策ごとに細かな計測指標を持たなくても、ナーチャリングが進んでいることを可視化できます。
あわせて、新しい施策を始めるときの合意形成のやり方も変える必要があります。事前に詳細な効果予測を求めると、実績のない施策ほど説得材料を用意しにくく、「読めないからやらない」という判断になりやすいです。
「この施策はKGIにこう寄与すると考えています。最初の3ヶ月は傾向を見ます」という程度のゆるめの合意で始める。こうすることで、社内では前例のない、かつ中間指標を追いにくい施策に投資することを踏み切りやすくなると考えています。
アクションナーチャリングは、ハウスリストを超えた「施策の意思決定基準」になる
ステージの実装がハウスリスト内の進捗を可視化する
アクションナーチャリングとは、スコアリングに頼らず、顧客の行動レベルに応じてナーチャリングのステージを設計する理論です。「ナレッジコンテンツに反応した」「事例やサービス資料を閲覧した」「問い合わせた」といった行動そのものでステージを区切り、MA/CRMに実装します。

※「アクションナーチャリング」はグロースソイルが独自に開発した理論で、現在商標申請中です
この設計をMA/CRMに組み込むと、ハウスリスト内のリードがどのステージにいるかが行動ベースで見えるようになります。「今月、ステージ1から2に上昇したリードが何件あったか」というナーチャリングの進捗を数値として持てます。これをKPIとすることで、個別施策ごとの細かい計測をしなくても、ナーチャリングが機能しているかどうか判断できるようになります。
MAの外側でも「ステージ相当」の判断はできる
アクションナーチャリングモデルは、MAの基盤ルールであると同時に、ハウスリスト外の施策を評価するための「共通認識」としても機能します。
たとえば、ポッドキャストを毎週聴いている見込み顧客がいるとします。その人はハウスリストに入っていないため、MAではデータを測れません。しかし、「課題解決に関するナレッジコンテンツを継続的に消費している」という行動は、アクションナーチャリングのモデルで見れば、ステージ2(ナレッジコンテンツに反応している層)に相当します。
SNSのフォロワーも同様です。ナレッジコンテンツに継続的に反応しているフォロワーは、ハウスリストには存在しませんが、ナーチャリングの観点では既にステージが2まで進んでいます。
この捉え方ができると、予算承認の場面で使える言語が生まれます。「ポッドキャスト施策は、ハウスリスト外のステージ2相当の人を生み出すための投資です」「データでは追えないものの、ステージ2相当の行動を毎週、もっと言えば毎日起こすことができる」という説明が成立します。「計測できないから却下」ではなく、「ステージの観点からナーチャリングに寄与するかどうか」という前向きな議論の土台となります。
アクションナーチャリングモデルは、ハウスリストを超えて、ナーチャリング施策全体の投資判断を支える共通認識として機能します。

まとめ
ナーチャリングの打ち手が広がらない根本原因は、「ハウスリスト内=ナーチャリングの対象」という思い込みにあります。KGIを商談数に絞り、アクションナーチャリングモデルをハウスリスト内のKPI設計と、ハウスリスト外の施策判断の両方に使うと、「計測できないから却下」から「ステージ上昇に寄与するかどうか」という前向きな議論に変えられます。計測できない不確実な領域に投資を継続できてはじめて、市場全体のナーチャリングは動き出します。
グロースソイルでは、ナーチャリングの無料相談を受け付けております。お気軽にお申込ください。
この記事の執筆者
株式会社グロースソイル
代表取締役
髙橋 航平
大学卒業後、新卒で人材系ベンチャー企業のネオキャリアに入社。マーケティング本部にて、新規BtoBメディア事業の立ち上げを経験。 その後、MAの導入活用支援会社に転職し、コンテンツ編集長として自社マーケティングと新規顧客開拓を推進。
2024年1月、株式会社グロースソイルを創業。BtoB企業のナーチャリング課題を解消できる会社づくりに取り組む。


