顧客の購買を支援するセールスコンテンツを生み出すには
2024/06/05
「コンテンツ」というと、SEOコンテンツやオウンドメディアのコンテンツをイメージされることが多い。しかし、コンテンツとは情報そのものであり、活用場面は多岐に渡る。当然、マーケティングだけでなく、営業においても重宝される。
株式会社セレブリックスで執行役員CMOを務める今井昌也氏(@MimaiCEREBRIX)は、自身のnoteでこんなことを綴っている。
そろそろハッキリさせましょう。
営業におけるゲームモデルの前提が変わった今、「どんな能力を持った人がトップセールスになって行くのか」を。
(中略)
これからの時代は、コンテンツを作れる営業が勝利するでしょう。それは営業の世界でもコンテンツファーストの時代がやってくるという事です。
引用:これからのセールスは 「コンテンツを作れる人」 が勝ちます。|Masaya Imai
セールスコンテンツを必ずしも営業担当者がつくる必要はないが、営業においてコンテンツの重要性は確実に上がっている。
本記事では、セールスコンテンツとは何か、セールスコンテンツのアイデアをどのように生み出すのかを解説する。
セールスコンテンツとは
セールスコンテンツとは、営業活動において活用できるコンテンツのこと。

営業担当者は顧客にとって価値ある情報を提供することで信頼関係を醸成し、商談獲得・契約獲得へとつなげる。価値ある情報をすみやかに提供するために、営業現場ではセールスコンテンツを活用する。
セールスコンテンツの必要性をより深く理解するためには、「バイヤーイネーブルメント」という概念を理解する必要がある。
セールスコンテンツとバイヤーイネーブルメントの関係
バイヤーイネーブルメントとは、「バイヤー(購買担当)」と「イネーブルメント(有効化)」を組み合わせた概念のこと。営業担当の論理ではなく、顧客の購買行動論理に焦点を当てた仕組みづくりのことを指す。

セールスコンテンツとバイヤーイネーブルメントの関係について考える前に、前提として認識しておくべきことがある。
「顧客は買いたがっている」
お金の向こう研究所 代表の田内 学 氏(@mnbtauchi)は、著書『きみのお金は誰のため』のなかでこう綴っている。
問題を解決しているのはお金自体ではなく、お金を受け取る人々
お金が商品に変わるのではなく、自然資源に無数の労働が結びついて商品が生産される
お金の力は選ぶ力。解決してくれる人を選ぶことしかできない
引用:きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」|東洋経済新報社 p100
お金はサービスを受けるための媒介に過ぎない。顧客は自社が抱える課題の解決につながるサービスには喜んでお金を支払う。
しかし、法人の決裁は購買担当者の独断では決められない。金額によっては上司の承認に加えて、稟議に通す必要がある。
「買いたがっている購買担当者が社内の承認を得るために、情報提供を通じて支援する」という視点がこれからは求められる。セールスコンテンツは売り込むためにつくるのではなく、購買担当者を支援するためにつくる。
3つのセールスコンテンツ
セールスコンテンツには、大きく分けると3つのタイプがある。

課題特定コンテンツ
課題特定コンテンツとは、顧客が言語化しきれていない課題を明確にする役割を持ったコンテンツのこと。グロースソイルが公開しているコンテンツのなかでは、以下2つが課題特定コンテンツとして分類できる。
関連記事:BtoB企業こそコンテンツマーケティングに取り組むべき理由
関連記事:キーワードリストが企画力を落とす理由
顧客は漠然とした問題意識を抱えながら、その問題を解決するためにやるべきこと(課題)を特定できずに悩んでいる。
営業担当者は顧客に状況をヒアリングし、問題解決の足掛かりとなる情報を提供する。そうした役割を担うのが課題特定コンテンツである。
検討支援コンテンツ
顧客は課題を認識したのち、解決策として利用するサービスを比較検討する。
商談前のコミュニケーションを通じて信頼を得られていたとしても、必ずしも発注してもらえるわけではない。購買担当者も職務として比較検討するため、複数ある選択肢のなかでそのサービスを推す合理的な理由を必要とする。
複数あるサービスのなかで自社サービスが最適な選択肢であると確信を持てるよう、検討材料となるようなコンテンツを提供する必要がある。
例:詳細なサービス内容、競合他社との違い、過去の支援実績など
稟議支援コンテンツ
購買担当者が推すサービスに対して発注するには、稟議を通す必要がある。
営業担当者が提案しているサービスが高額であればあるほど、顧客の稟議は複雑化する。稟議では一般的に、以下のような視点で選択の妥当性を確認する。
目的と必要性
サービス利用の目的が明確で、会社にとって必要不可欠か
サービス利用の目的が会社の戦略や方針と合致しているか
事業計画との整合性
提案内容が事業計画に沿っているか
計画を補完するものであるか
事業計画の達成にどの程度貢献するか
費用対効果
投資に見合った成果を得られる見込みがあるか
リスク分析
サービスを利用することでどのようなリスクが生じるか
リスクを軽減する対策を打てるか
法的・倫理的な適合性
サービス内容が法令や規制に抵触していないか
会社の倫理規定や社会的責任に照らして、適切であるか
実現可能性
プロジェクトを始動することで、得たい成果を得られる見込みがどれだけあるか
スケジュールは妥当な設計になっているか
関連部署への影響
サービスを受けることでどのような部署に影響があるか
関連部署と合意形成できているか
協力体制を構築できているか
競合状況と差別化要因
サービスを受けることで競合他社に対する優位性を確立できるか
提案内容に独自性はあるか
長期的な展望
提案内容が長期的な企業価値向上にどう影響するか
将来的な事業環境の変化も見据えて提案しているか
ステークホルダーへの影響
株主・顧客・従業員など、ステークホルダーにどのような影響・印象を与えるか
提案者の信頼性と実行力
サービス提供者に専門性や過去の実績はあるか
サービス提供者は提案内容に沿って着実にサービス提供する能力を有しているか
このような視点で評価される購買担当者が理論武装し、稟議での質疑応答を乗り切れるよう、コンテンツを通じて情報を提供する。
セールスコンテンツを生み出すまでの流れ
セールスコンテンツの必要性や分類を理解すれば、アイデアが自然に湧いてくるわけではない。一部のアイデアマンに頼らずコンテンツアイデアを生み出すためには、ブレスト会議を実施するのが良い。
ここでは、セールスコンテンツのアイデアを生み出し、企画へと落とし込み、コンテンツとして完成させるまでの流れを解説する。

ブレスト事前準備
1. 何の役割を持つコンテンツを生み出したいのか決める
前述の通り、セールスコンテンツには以下3つのパターンがある。
課題特定コンテンツ
検討支援コンテンツ
稟議支援コンテンツ
どのコンテンツを優先的に制作すべきかは、自社が抱えている営業課題によって異なる。
商談獲得数やSAL(Sales Accepted Lead)・TQL(Teleprospecting Qualified Lead)創出に課題があれば課題特定コンテンツ。稟議支援フェーズへの移行に課題があれば検討支援コンテンツ。稟議後の受注率に課題があれば稟議支援コンテンツが必要となる。
自社がセールスプロセスにおけるどの工程を改善したいのか整理し、何の役割を持つコンテンツを生み出したいのかを定める。
2. ブレストのテーマを決める
次に、ブレストのテーマを決める。ブレストのテーマは、生み出したいコンテンツによっておおよそ決まる。
課題特定コンテンツを生み出したい場合
最近お客様に聞かれたこと
お客様がポロっとこぼした悩み
営業担当として感じる、ありがちな顧客課題
検討支援コンテンツを生み出したい場合
比較検討中のお客様から聞かれたこと
お客様が比較検討の基準にしているもの
自社に発注をしてもらったときの決め手
他社に発注されてしまったときの要因
稟議支援コンテンツを生み出したい場合
稟議に臨むお客様から求められた情報
過去に稟議で否認されてしまった原因
自社で稟議する際に見ているポイント
このように、生み出したいコンテンツからブレストのテーマを決めておくと、意図に沿ったコンテンツアイデアが生まれやすくなる。
3. 参加者を決める
ブレスト会議への参加者選定も重要なプロセスだ。参加者を決める際は、以下の観点で選定する。
ブレストのテーマに合った職務を担当しているか
顧客の行動や要望を敏感に察知している人か
コンテンツづくりに協力的か
上記の視点で参加者を絞り込み、ファシリテーター含めて4人以内で実施する。4人以内であれば一人ひとりの主体性が高まり、良質なアイデアが生まれやすくなる。
ブレスト会議当日
4. テーマに沿った回答を洗い出す
あらかじめ決めたテーマを伝え、回答を洗い出してもらう。
オフラインであればホワイトボードに付箋を貼る。オンラインであればMiroやFigJamのようなホワイトボードツールを利用してテーマに対する回答を洗い出す。

ブレストをするとき、以下4つのルールを守るよう参加者に周知する。
出てきた回答に対して批判・否定をしない
一風変わったアイデアを歓迎する
質より量を重要視する
近しいもの同士を結合・発展させる
ここで出た回答をすべて具体化させるわけではない。できる限り楽な気持ちで書き出し、様々な意見が出される空気をつくることが重要だ。
5. 出てきた回答をアイデアへと昇華させる
次に、洗い出した回答をアイデアへと昇華させる。

テーマに沿った回答があれば、アイデアは自ずと生まれる。難しく考えず、それぞれの回答に合ったコンテンツアイデアを書き出していけば良い。
6. 企画化するアイデアを決める
洗い出したコンテンツアイデアのなかから、実際に企画化するものを選定する。
「たしかに、そのコンテンツがあるとお客様は助かるだろうな」と思うものに対して参加者が投票し、票が多く集まったコンテンツをつくると良い。

この時点で、企画・制作を担当する人も決められればその後がスムーズに進む。
アイデアの企画化・コンテンツ化
7. アイデアを企画書に落とし込む
アイデアと企画は似て非なるもの。
アイデアは単なる思い付きであるのに対し、企画は課題解決方法の合意を取るために要件を整理したもの。そして、それを文書化したものが企画書である。
アイデアを具体化して合意形成し、コンテンツ制作を進めるために企画書を制作する。
グロースソイルでは、コンテンツ形式ごとに企画書のテンプレートを公開している。以下のGoogleドキュメントをコピーし、自社の運用に合わせて調整したうえで活用してほしい。
GROWTH SOIL_記事コンテンツ企画書&原稿テンプレート
GROWTH SOIL_ホワイトペーパー企画書&原稿テンプレート
8. 企画について合意形成する
コンテンツ制作は、多くの場合複数人の協力を仰ぎながら進める。そのため、関係者の意見を取り入れ、企画内容をブラッシュアップしたうえで合意形成するプロセスを踏む必要がある。
企画の合意形成は、チャット上でおこなう場合と会議を実施しておこなう場合がある。自社の意思決定スタイルに合わせて最適な方法を選択すると良い。
9. 制作・編集し、コンテンツとして完成させる
最後に、コンテンツを制作・編集し、完成させる。
完成させたセールスコンテンツは、必ずしもWeb上に公開する必要はない。商談進行時のキラーコンテンツとして、あえてWebサイト上に公開せず、適切なタイミングで渡すという手もある。
自社にどのようなセールスコンテンツが存在しており、それぞれどのような場面で活用できるのかを全員が把握できる状態になっていることが重要だ。必要なときに瞬時に取り出せるよう、セールスコンテンツの管理体制も整えておこう。
お客様は買いたがっている
繰り返しになるが、お客様は買いたがっている。自社の課題解決につながる最良の選択肢だと理解すれば、売り込まずとも買いたがる。とりわけBtoB商材では、購買を実現させるために必要な情報を提供するといった視点が営業担当者に求められる。
セールスコンテンツを生み出すのは、営業部門ともマーケティング部門とも限らない。より良い購買体験を実現するために、部門の垣根を越えて手を組む必要がある。この機会に一度、どのようなセールスコンテンツを生み出せば顧客の購買を支援できるのか、社内で一度議論してみてほしい。
この記事の執筆者
株式会社グロースソイル
代表取締役
髙橋 航平
Adobe Marketo Engageの導入支援会社にてコンテンツ編集長を務めたのち、2024年に株式会社グロースソイルを創業。
ナーチャリングに特化して、マーケティング支援サービスを展開。独自のナーチャリングモデル『アクションナーチャリング』をもとに、BtoB企業に顧客指向のナーチャリングを実装している。


