顧客からの信頼を得るナレッジ記事のつくり方
2024/07/06
行動データをもとに、顧客の興味関心を推測したうえで営業アプローチする。このような営業体制を実現できるようになった今、価値あるコンテンツを持っている企業とそうでない企業では大きな差が開いている。
コンテンツを持っている企業は興味関心を推測できるうえ、顧客のニーズに合った関連コンテンツを紹介できる。一方、コンテンツを持っていない企業は興味関心を推測できず、ニーズを引き出したとしても届けられるコンテンツがない。ゆえに、強引に商談へと誘導する以外の手を持たない。
しかし、自社固有のナレッジを発信し続けられている企業はほんの一握り。多くの企業では、コンテンツ発信をしたくても社内の協力を上手く得られず、マーケティング活動が暗礁に乗り上げている。
今回は、社内の協力を思うように得られない状況下でどのように価値あるナレッジ記事を生み出すかを解説する。
ナレッジ記事とは
「ナレッジ記事」という言葉に明確な定義はないが、グロースソイルでは以下の通り定義している。
ナレッジ記事とは
その会社固有のナレッジ(知見)をまとめた記事のこと。企業活動のなかで得た一次情報をまとめたものを指す。
ナレッジ記事は、SEO記事とは似て非なるもの。
SEO記事は、検索キーワードで上位を獲得するために企画・制作する。一方、ナレッジ記事は検索キーワードではなく、顧客課題を起点に企画・制作する。

ナレッジ記事を制作すべき理由
ナレッジ記事は、以下のような場面で価値を発揮する。
SNSやメールなど、各種チャネルにおける情報発信
商談化前のお客様との関係構築
お客様の興味関心の仮説立て
ナレッジ記事は、とりわけインサイドセールスの営業活動において役立つ。
ナレッジ記事がなければ、架電前にお客様の興味関心を推測できない。また、悩みを引き出しても届けられるコンテンツがないため、強引に商談へと誘導せざるを得ない。
一方でナレッジ記事があれば、架電前にお客様の興味関心を推測できる。興味関心を推測したうえで架電すれば質の良い対話ができ、悩みを引き出せる可能性が高まる。そして、引き出した悩みに合ったコンテンツを提供できる。
ほとんどの人は、後者の営業アプローチをしてくれる会社と商談をし、サービスの利用を検討したいと考えるだろう。価値あるコンテンツを公開していることは顧客からの信頼につながり、必然的に収益にも好影響を与える。
取材による制作を推奨する理由
多くの場合、マーケティング部門よりもサービス提供を担う事業部門の方が、事業領域に関して深い知識を有している。そのため、自社固有のナレッジ記事を生み出すには、事業部門の力を借りる必要がある。
しかし、コンテンツマーケターが事業部門の人に記事執筆を依頼すると、以下のような問題に直面することが多い。
執筆担当者のなかでコンテンツ制作の優先度が低く、納期通りに提出してもらえない
コンテンツ制作を依頼すると、忙しさを理由に難色を示される
原稿を作成してもらえたとしても、記事としての体裁が整っておらず編集に工数がかかる
上記の理由から、事業部門の人に執筆を依頼するより、事業部門の人に取材をしてマーケティング部門の人が制作する方が現実的だと考えている。
ナレッジ記事の制作プロセス
ナレッジ記事の制作プロセスは、「企画・取材」「記事制作」の2つに大きく分けられる。

企画
1. 顧客課題を洗い出す
マーケターがやってしまいがちな失敗として、「架空の顧客課題を掲げ、誰にも刺さらないコンテンツを生み出してしまう」というものがある。顧客の声をもとにしていない企画は、顧客にとって価値あるコンテンツにはならない。
顧客課題を洗い出すときは、顧客と直接対峙しているインサイドセールス、フィールドセールス、事業部門の人を巻き込むと良い。実在する顧客の声をもとにした企画は、必ず誰かの役に立つ。
※アイデア出しに参加したことでコンテンツ制作に対して主体性が生まれ、協力してくれやすくなるという副次的効果もある
関係者を巻き込み、顧客の課題を洗い出すためのプロセスは以下のブログで詳しく解説している。
関連記事:顧客の購買を支援するセールスコンテンツを生み出すには
2. 顧客課題の優先度を決め、対象とする課題を選定する
次に、洗い出した顧客課題の優先度を決める。顧客課題の優先度は、以下4点を加味して定める。
顧客から聞く頻度
顧客にとっての悩みの深さ
自社がコンテンツを用意できているか否か
自社サービスは課題解決の有力な手段となり得るか
顧客課題に優先度をつけたうえで、優先度が高い課題を選定する。
3. 企画書作成
優先度が高い顧客課題を選定したのち、課題解決につなげられるようなコンテンツの企画書を作成する。
企画書には、以下の要素を記載する。
企画の目的
自社目線
顧客目線
想定読者
部署
役職
業界
読者が抱える課題
読者のゴール
想定されるメインメッセージ
制作関係者
取材対象者
取材担当者
編集者
CTA
評価指標
目標数値
想定流入チャネル
SEO対策
ターゲットキーワード
月間検索数
想定文字数
スケジュール
取材実施時期
初稿提出時期
ページ公開時期
参考資料
質問項目
大枠の記事骨子
企画書は、「どのような話をすればナレッジ記事制作に協力できるのか」を取材対象者が理解できることが重要だ。わかりやすく整理したうえで依頼することは、継続的に協力を得てナレッジ記事を公開し続けるための必須要素である。
グロースソイルでは、記事コンテンツの企画書テンプレートを公開している。以下のGoogleドキュメントをコピーし、自社の運用にあわせて改変したうえで活用してほしい。
GROWTH SOIL_記事コンテンツ企画書&原稿テンプレート
4. 取材依頼
作成した企画書をもとに取材を依頼する。取材を依頼するときは、あわせて以下の情報も伝えると良い。
なぜあなたなのか
なぜその顧客課題を取り上げているのか
どのような形で協力してほしいのか
協力することでどのようなメリットがあるのか
社内とはいえ、雑な依頼をすれば前向きな協力は得られない。取材対象者が気持ちよく協力できるよう、必要な情報は整理して伝えよう。
5. 取材実施
ナレッジ記事の取材は、考え方によっては事例記事や採用広報記事の取材よりも難易度が高い。
取材する必要があるということは、取材前には自身がまだ理解できていないことを取り上げるということだ。そのため、取材は単に話を聞くだけでなく、自身が理解しきるまで深掘りし続ける必要がある。
取材に臨むときは、以下5点を頭に入れておこう。
自分が話す場ではなく、相手の話を引き出す場である
相手の話を遮らない
質問した後の沈黙は思考時間と捉え、黙って待つ
理解しきるまで深掘りして質問する
自身の理解にズレがないか、都度確認する
執筆をライターに依頼する場合、取材で聞いた情報だけでなく周辺情報もあわせて提供する必要がある。取材内容の前提となる情報もあわせて伝えることで、内容を深く理解した状態で執筆に取り掛かれる。
記事制作
6. 取材音声の文字起こし
取材実施後、取材音声を文字起こしする。文字起こしにはAIを活用すると良い。
音声データの文字起こしはChatGPTやClaudeでもできるが、定期的におこなうのであれば文字起こし用のAIを使うのが望ましい。文字起こしにおすすめなのは『Notta』。

NottaはZoomやGoogle Meetなど、Webk会議ツールと自動連携できる。文字起こしにかける工数は限りなく抑えられるようなオペレーションを構築しよう。
7. 記事骨子調整
ナレッジ記事の場合、大枠の記事骨子は企画段階で作成する。そのため、ここでは取材内容をもとに記事骨子の調整をおこなう。
ナレッジ記事は、読者が最後までは読んでくれないことを前提に骨子をつくる。欲しい情報にいち早く辿り着きたがっている読者のニーズに応えるために、重要な情報は前半部分に配置しよう。
8. 執筆
作成した骨子に沿って、本文の執筆を進める。
ナレッジ記事は、「課題解決につながる情報が端的にまとまっているもの」が好まれる傾向がある。そのため、取材をして制作するものの、コラム形式で執筆することが多い。
取材を通じて聞いた話をそのまま文章化するのではなく、インプットして一度咀嚼したうえでコラムとして書き起こす。そういった高度な執筆能力が求められる。
おすすめ書籍:取材・執筆・推敲 書く人の教科書|ダイヤモンド社
おすすめ書籍:三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾|CCCメディアハウス
9. 編集
初稿を作成し終えたら、編集者は以下の観点で編集を加える。
あらかじめ指定した顧客課題の解決につながる内容になっているか
自社サービスの必要性が違和感なく伝わる内容になっているか
取材時に引き出せた重要な情報を含められているか
文章がよどみなく流れているか
取材担当者とライターが分かれる場合、より上記の視点での編集が重要性を増す。
「顧客にとって価値あるコンテンツになっているか?」を基準に、厳しく編集の手を入れよう。
10. 内容チェック
原稿の編集が完了し次第、取材対象者に原稿を共有する。取材対象者は「取材で話した内容と齟齬がないか」「自身の名義で公開されて問題ないコンテンツになっているか」という観点で内容をチェックする。
取材対象者の名義で公開するのであれば、読者から見れば「取材対象者の方が制作したコンテンツ」となる。自信を持ってWeb上に公開できるよう、入念なチェックを依頼しよう。
11. ページ公開
校了した原稿を入稿し、ページを作成して公開する。ページ公開後、以下3点に対応する。
取材対象者へのお知らせ
SNSやメールでの告知
チャットでの社内向け告知
ナレッジ記事を自身で執筆するのは腰が重くても、自身が話した内容が記事として公開されることは誰しも嬉しいもの。ページ公開後は取材対象者にお知らせし、SNS等での拡散も依頼しよう。
AIを活用してナレッジ記事制作を効率化するには
昨今は生成AIが発達し、コンテンツ制作にも十分活用できるレベルまで到達している。そのため、弊社も含めて各社はコンテンツ制作にAIを取り込み、業務の効率化を図っている。
しかし一方で、「AIを使えば人が動かなくてもコンテンツを作れる」というのは幻想にすぎない。AIにできるのはあくまで叩き台をつくるところまでであり、そこから「顧客の信頼を得るコンテンツ」へと昇華していくには、人による編集が必要不可欠だ。
生成AIと人の最適な役割分担については、malna株式会社がブログ「AIで記事作成は効率化できる?6つのツールを試して痛感した『人間』の重要性」にて解説している。現時点でのコンテンツ制作におけるAI活用の最適解と言える内容が詳細にまとめられているため、気になる方は読んでみてほしい。
読者は一次情報を求めている
生成AIの発達により、世に生み出されるコンテンツの総量は飛躍的に増えている。今や気になった記事すらも、大半は目を通すこともできない。
そんなコンテンツ過多の時代において、読者は一次情報をもとにしたコンテンツを求めている。実際に取材し、一次情報を引き出してまとめたナレッジ記事は、読者からの反応を得られるものになるだろう。
取材をする分、ナレッジ記事制作には手間暇がかかる。しかしその分、顧客にとって価値あるコンテンツを生み出せる。
価値あるコンテンツはありとあらゆる利益を企業にもたらす。自社の状況にあわせて、価値あるコンテンツを生み出す運用体制を検討してみてほしい。
この記事の執筆者
株式会社グロースソイル
代表取締役
髙橋 航平
Adobe Marketo Engageの導入支援会社にてコンテンツ編集長を務めたのち、2024年に株式会社グロースソイルを創業。
ナーチャリングに特化して、マーケティング支援サービスを展開。独自のナーチャリングモデル『アクションナーチャリング』をもとに、BtoB企業に顧客指向のナーチャリングを実装している。


