受け手が感激する取材体験のつくり方
2024/06/26
BtoB事業において、導入事例記事は重要な役割を担う。顧客が購買を検討する際の材料となり、資料請求および問い合わせの獲得率、受注率に大きく影響する。
株式会社WACULが2019年に実施した調査によると、事例コンテンツ30本まではCVRが大きく向上していくということがわかっている。事例記事が数件しかない場合はCVRが0.5%程度に推移するのに対し、30件ほど事例記事を公開している場合はCVRが1.5~3.0%程度まで上昇している。

出典:SaaSを扱うB2Bサイトにおける事例紹介ページの改善策の提言|株式会社WACUL
一方、事例記事の制作には顧客の協力が必須となる。取材を受ける顧客には、オフィスへ招くための手配、取材内容に関する情報整理、取材対応、広報との連携など、様々な業務が発生する。取材での体験次第では、「協力して損した」となり得る可能性もある。
様々な負担がありながらも取材に対応してくれる方に対して、より良い体験を提供するのは取材をする側の責務だ。本記事では、受け手が感激する取材体験のつくり方を解説する。
関連記事:顧客の購買を支援する事例記事の作り方
受け手が感激する取材体験をつくるうえで意識すること
取材依頼時に意識すること
1.取材目的を明確に伝える
取材を依頼するとき、取材目的と記事の用途を明確に伝える。
前述の通り、取材を受けることで様々な業務が発生する。それらの業務に対応しても良いと感じてくれる方は、依頼者に対して貢献したいという気持ちを持ってくれていることが多い。
何の目的で、誰のために、どのような事例コンテンツを作りたいのかを明確に伝える。そうすることで、取材を受ける人はどのように貢献できるかのイメージを描きやすくなる。
2.取材を受けることで得られるメリットを伝える
取材を受けるにあたって発生する業務は多くあるが、取材を受けることによって生まれるメリットもある。取材を受けることによるメリットは以下の通り。
これまでの取り組みを振り返る機会になる
自部門の取り組みが社内に知れ渡ることで、部門間連携がスムーズに進むようになる
自社の取り組みを社外へ発信することでブランド形成につながる
良い取り組みを発信することで採用・広報活動などにつながる
取材対象者自身のキャリアアップにつながる
人に何かを依頼するときは、その依頼に応じることで得られるメリットもあわせて伝えるのが良い。様々あるメリットのなかでも、対象者のニーズに合ったメリットを選び、心が動くメッセージとともに依頼しよう。
3.取材の手順とスケジュールを明確に示す
取材依頼を受けたとき、このように感じる方は多い。
「事例公開に協力はしたいけれど、具体的にどのように進めるのかイメージがついていないから簡単に承諾できない」
このような悩みを最小限に抑えるために、取材の手順とスケジュールは明確に示す必要がある。イメージできる依頼とそうでない依頼とでは、受け手によっての心理的な負担が大きく異なる。
取材準備段階で意識すること
4.取材対象者の情報を入念に調べる
取材対象者について、公開情報をもとに入念に調べる。対象者に関する情報は、Web上の情報を収集することに長けた生成AI『Preplexity』を利用することをおすすめする。

図表1:試しに前職の代表 岡本 氏について調べてみた
事前調査では、おもに以下のコンテンツに目を通すと良い。
対象者がインタビューを受けている記事
対象者が執筆した記事
対象者が制作した資料
対象者が登壇したセミナー
対象者の直近のSNS投稿
対象者が執筆した書籍
取材対象者について周到に調べておくと、取材当日に聞きたいことがあふれ出てくる。自身に関心を寄せ、調べたうえで踏み込んだ質問をしてくれるインタビュアーに人は好感を持つものだ。
5.質問項目とともに顧客課題の仮説を立てる
事例取材で質問する項目は、対象者に関わらずおおむね決まっている。事例取材では、およそ以下の通りの質問をすることが多い。
取材対象企業のサービス概要
当該サービスの導入前に抱えていた課題
自社に問い合わせた経緯
当該サービスの何を評価して導入を決めたのか
当該サービス導入から現在までに取り組んできたこと
当該サービスを導入して生まれた成果
当該サービスをどんな企業に勧めたいか
これらの質問は、事前の情報収集をさほどしていなくても問題なく遂行できる。しかし、より深い話を引き出すためには、取材対象者の関心ごとを把握し、課題の仮説を立てておくことが重要だ。
仮説があるからこそ、その仮説の答え合わせまで話が到達していないときに掘り下げる質問ができる。事前準備の質は、取材時の掘り下げ質問に表れる。
取材当日のコミュニケーションで意識すること
6.緊張を味方につける
取材の経験が少ない場合、顧客訪問をして取材するとなると、緊張で固まってしまうこともある。特に、普段お客様と接する機会が少ないマーケターであればなおさらだろう。
順天堂大学医学部教授の小林氏は、NHKのテレビ番組『ヴィランの言い分』のなかでこう語っている。
程よい緊張状態が最高のパフォーマンスを引き出す
引用:【緊張の言い分】人類が生き残るために備わった大事な体の反応⁉|NHK

出典:【緊張の言い分】人類が生き残るために備わった大事な体の反応⁉|NHK
しかし、緊張を適度に留められるのであれば初めから悩むこともない。過剰に緊張してしまい、パフォーマンスが落ちてしまうことを恐れて悩むのである。
過剰に緊張してしまうのは、意識のベクトルが自分に向いているから。緊張している自分を一歩引いてみて適度な緊張度合いまで戻せれば、取材対象者から見て話しやすい人になるだろう。
7.取材対象者の話を遮らない
取材をするときは、相手の話を遮らないことを意識しよう。話を遮らないだけで、取材体験は格段に向上する。
取材をしていると、話に熱が入って脱線していくこともある。ここで、脱線しているからといって話を遮って止めるのは得策ではない。脱線しているように見えるが、当人にとっては繋がっている話の可能性もある。また、話を遮られたことで気を悪くし、その後踏み込んだ話をしてくれなくなることもある。
話に熱が入っているときには、熱を込めて話してくれていること自体に感謝し、ひとしきり話し切るまで耳を傾けよう。本題に戻すのはその後でも遅くない。
8.きらりと光るキーワードを引き出す質問をする
事例取材は多くの場合、対面で実施する。これには撮影の都合もあるが、取材の質にも理由がある。
実際、オンラインでも取材自体はできる。質問項目に沿って取材をしていけば、ある程度形になるだけの情報は得られるだろう。
それでも対面で実施するのは、きらりと光るキーワードを引き出すためだ。対面の取材はオフラインよりも集中して臨んでもらいやすいため、キーワードを引き出せる可能性が高まる。
キーワードを引き出すために、「なぜ」の質問を重ねる。何度か「なぜ」の深掘りをした先に、きらりと光るキーワードが見つかる。
取材後の対応で意識すること
9.事例記事に対する各所からの反応を伝える
事例記事は公開後URLをお知らせして終わることが多い。ただし、より良い体験を生むためには、その後のコミュニケーションも重要となる。
事例記事を公開した後に寄せられた反応を伝えると、より「話してよかった」と感じてもらいやすい。以下のような反応を後日伝えるのがおすすめだ。
自社社員の感想
事例記事を読んだお客様の感想
商談件数、商談受注率への影響
SNS上での反応
自身が協力して生まれたコンテンツが良い影響を与えていると知ることは、何にも代えがたい喜びがある。このように、マメにコミュニケーションを取れる人は顧客からも自社社員からも信頼されるだろう。
最良の取材体験は相手を慮ることで生み出せる
これまで解説してきたことを一言でまとめれば「相手を慮って動こう」ということだ。忙しい中でも時間を割いてくださったことへの敬意を持ち、より良い体験をしてもらおうと尽力する姿勢は顧客にも必ず伝わる。
事例取材のために対象者について深く調べ、想像し、話を聞くプロセスのなかで、あなたの顧客解像度はぐっと高まる。顧客解像度が高まれば、マーケターとしてのレベルが上がる。
自身の成長にとっても良い機会と捉え、自信を持てるだけの準備をして事例取材に臨んでほしい。
この記事の執筆者
株式会社グロースソイル
代表取締役
髙橋 航平
Adobe Marketo Engageの導入支援会社にてコンテンツ編集長を務めたのち、2024年に株式会社グロースソイルを創業。
ナーチャリングに特化して、マーケティング支援サービスを展開。独自のナーチャリングモデル『アクションナーチャリング』をもとに、BtoB企業に顧客指向のナーチャリングを実装している。


