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顧客の購買を支援する事例記事の作り方

顧客の購買を支援する事例記事の作り方

2024/06/14

人は商品を購入するとき、すでに購入した人によるレビューを確認する。なぜなら、失敗するのが怖いから。支払うお金に見合った結果を得られないことが不安で、レビューをくまなく確認する。

複数人が意思決定に関与する法人間取引では、その傾向はより顕著になる。たとえどんなに良いサービスだとしても、事例がなければ稟議を通せないということは往々にして起こり得る。BtoB事業において、事例コンテンツはそれだけ重要だと言える。

しかし、高品質な事例コンテンツを潤沢に持っている企業はほんの一握り。事例コンテンツが少なければ、顧客はサービスの利用を慎重に検討する必要がある。それは結果として、商談受注率に影響する。

本記事では、BtoB事業において特に重要な事例記事の作り方を解説する。

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2種類の事例コンテンツ

事例コンテンツは大きく分けて2種類ある。

  • 社名あり事例

  • 社名なし事例

事例コンテンツとして最も価値があるのは、顧客の生の声をもとにした社名あり事例であることに異論はないだろう。サービスを実際に受けた”実在する顧客”のエピソードに触れることで、その内容の信憑性が増す。実際にサービスを受けて満足している人の声は、発注を検討する上で大きな安心材料となる。

しかし、社名ありでの事例公開は、顧客にとって負担になる場合がある。広報への確認が必要なことはもちろん、その業務を外注していることを公開するデメリットが大きい場合もある。商材によって難易度は異なるが、事例取材の協力を簡単に得られる企業は少ない。

このような事情を加味して社名なし事例を制作し、事例コンテンツの量を担保する企業もある。ただし、本記事は「顧客の購買を支援する事例記事の作り方」をテーマとしているため、最良の事例コンテンツである社名あり事例の作り方に焦点を当てて解説する。

2種類の事例コンテンツ

事例記事制作のプロセス

事例記事は大きく分けて、以下のプロセスで制作を進める。

事例記事制作のプロセス

取材先の選定・協力依頼

1. 顧客課題を洗い出す

事例コンテンツを制作しようとすると「協力してくれそうな企業に声をかける」という動きになりがちだが、これは誤りである。事例コンテンツは顧客の購買を支援するために制作するのであって、制作することそのものは目的ではない。

顧客はサービスの利用を検討するとき、自社の課題に合った支援事例を持っている企業に依頼したいと考える。そのため、「顧客がどんな課題を持っているのか」をできる限り多く洗い出すことが重要だ。

顧客の課題を洗い出すためのプロセスは以下のブログで詳しく解説している。

関連記事:顧客の購買を支援するセールスコンテンツを生み出すには

顧客課題を洗い出すときは、顧客と最も多く接している営業を巻き込むと良い。実在する顧客課題を初めに引き出すことで、その後の企画が的を得たものになる。

2. 顧客課題の優先度を決め、対象とする課題を選定する

次に、洗い出した顧客課題の優先度を決める。顧客課題の優先度は、以下3点を加味して定める。

  • 顧客から聞く頻度

  • 顧客にとっての悩みの深さ

  • 自社がコンテンツを用意できているか否か

顧客課題に優先度をつけたうえで、優先度が高い課題を選定する。

3. 依頼先の選定

続いて、指定した課題に合った顧客を選定する。マーケティング担当者は個々の支援内容まで把握していないことが多いため、自身で依頼先を選定することは難しい。

「○○の課題を持ったお客様の支援をしたことがある方はいますか?」と社内で投げかけ、適切な依頼先を選定しよう。

4. 顧客情報・支援情報の学習

依頼先を選定したら、顧客情報・支援情報の学習に移る。

依頼先企業の公式サイトやニュースリリースなどから顧客情報を、自社のCRMから支援情報を収集・学習する。

支援担当者にヒアリングする前に学習しておくことは、最低限のマナーと言える。事例取材の依頼は多少なりとも支援担当者にとって負担である。企画者自身でできる範囲の学習は先に済ませ、そのうえで必要な情報をヒアリングすると、支援担当者は気持ちよく協力できる。

5. 支援担当者へのヒアリング

顧客情報・支援情報の学習をしたのち、支援担当者にヒアリングする。支援担当者には、以下5点を重点的にヒアリングすると良い。

  • 対象顧客とのこれまでの付き合い

  • 支援開始前に顧客が抱えていた課題

  • 何を評価され、契約に至ったのか

  • 実際におこなった支援内容

  • 支援を通じて生まれた成果

上記の情報を事前にヒアリングしておくと、顧客へのインタビューが予想通りに進む。インタビューで踏み込んだ情報を引き出すには、事前に話の道筋を予測できていることが重要だ。

6. 取材依頼書作成

自身での学習内容、支援担当者へのヒアリング内容をもとに、取材依頼書を作成する。取材依頼書は、以下の要素を押さえて作成する。

  • 取材の目的

  • インタビュー項目

  • 掲載場所

  • 希望日時

  • 希望場所

  • 訪問者

  • 掲載予定日

  • 掲載媒体

  • その他諸条件

グロースソイルでは、取材依頼書のテンプレートを公開している。下記のGoogleドキュメントをコピーし、自社の運用に合わせて調整したうえで活用してほしい。

GROWTH SOIL_取材依頼書テンプレート

7. 取材依頼

作成した取材依頼書をもとに、対象顧客へ取材を依頼する。取材を依頼するときは、あわせて以下の情報も伝えると良い。

  • 事例記事制作に協力してほしい理由

  • 事例記事制作に協力することによるお客様のメリット

事例取材は、顧客にとってもメリットがある。

多くの人は「自分たちの取り組みを別部署の人たちに理解してもらえず、部署同士での連携が上手くいっていない」という悩みを抱えている。そのような状況下で自分たちの取り組みを自ら説明しても、なかなか届かないことも多いだろう。

しかし、第三者による事例記事として公開されることで、これまでの取り組みに対する社内理解が深まることがある。それによって「社内連携がスムーズになった」という話を何度も耳にしてきた。

人に何かを依頼するとき、相手側のメリットをあわせて伝えると承諾を得やすくなる。気持ちよく協力してもらえるよう、依頼の伝え方にも気を配ろう。

取材事前準備

8. ライター・カメラマンの手配

取材の承諾を得たら、ライター・カメラマンの手配をする。

BtoB事業の事例記事ライティングは、ライターの腕が問われる。きれいな文章はかけるものの事業と専門用語の理解が足りず、事例記事として成立しないといった問題が生じることは多々ある。

BtoB事業の理解度が高いライター探しは困難を極める。すでに付き合いがあるライターがいない場合、事例記事制作に取り組むことを決めた段階でライター探しを始めると良い。

9. 手土産購入

事例取材当日、時間を割いて協力してくれていることへのお礼を込めて手土産は持っていこう。

事例記事の公開は顧客側にもメリットがあるとはいえ、あくまで”協力してもらう”という関係性にある。広報への連携やこれまでの取り組みの振り返りといった負担をしてもらうことへのお礼はすべきだ。

手土産の選定では、以下の要素を念頭に置いておくと良い。

  • なぜそれを選んだのか、簡単に説明できる

  • 冷蔵を必要としない

  • 取材場所から離れた場所で販売している

特に、「取材場所から離れた場所で販売している」ということを意識してほしい。仮に取材場所のオフィスビル内で購入した場合、「間に合わせで持ってきたな」という印象を与えてしまう可能性がある。

手土産は「あなたのことを考えて選んだ」という心遣いが伝わることが重要だ。自信を持ってプレゼントできる、渾身の手土産を見つけよう。

取材当日

10. 取材実施

取材相手が高い役職についている人であったり、自身が初めての取材であったりすると、不安になることもあるだろう。

しかし、取材で聞く項目は取材依頼書作成時に整理しているため、あとは話を聞かせてもらうだけ。取材に臨む前に、以下4点を頭に入れておこう。

  • 自分が話す場ではなく、相手の話を引き出す場である

  • 相手の話を遮らない

  • 相手が沈黙してもじっと待つ

  • 緊張しても仕方がない

取材は何をするかよりも、何をしないかによって品質が決まる。あまり深く考えず、相手への関心だけ持っておけばある程度上手くいくだろう。

11. アイキャッチ写真撮影

重要だが忘れがちなのが、アイキャッチ写真の撮影。取材終了後の方が柔和な表情をしていることが多いため、取材終了後に撮影することをおすすめする。

アイキャッチ写真にルールはないが、BtoB商材の事例記事では社名ロゴの前で撮影することが多い。

リリースから20年、ロングセラー製品ゆえの課題を解消。「先入観にとらわれないアドバイスをもらえたのが大きかった」

出典:リリースから20年、ロングセラー製品ゆえの課題を解消。「先入観にとらわれないアドバイスをもらえたのが大きかった」|株式会社才流

新卒757名の入社手続きに対応。成長戦略に伴う組織拡大を下支え

出典:新卒757名の入社手続きに対応。成長戦略に伴う組織拡大を下支え|株式会社SmartHR

取材場所に社名ロゴがある場合は社名ロゴの前で、ない場合は背景が綺麗な場所で撮影し、画像編集でロゴを掲載する。アイキャッチ画像では、どの企業を支援したのかが瞬時にわかることが重要だ。

事後対応

12. お礼メール送付

当たり前ではあるが、取材後は必ずお礼メールを送付する。事例取材はお客様に”協力してもらう”という側面が強く、協力してもらったことへの感謝は当然伝える必要がある。

お礼メールには以下の要素を含めると良い。

  • 時間を割いてもらったことへのお礼

  • 取材内容のなかで特に心に残ったこと

  • 今後のさらなる支援方針(≒意気込み)

  • 今後の事例記事制作スケジュール

テンプレート通りではないお礼メールを受け取れば、お客様も時間を割いて協力したことに納得感を持てる。心を込めてお礼をしよう。

13. 骨子作成

取材内容をもとに骨子を作成する。事例記事は以下の通りの構成になることが多い。

  1. 導入前に抱えていた課題

  2. 声をかけてもらったきっかけ

  3. 自社を選んだ決め手

  4. 支援開始からこれまでの取り組み

  5. 支援を通じて生まれた成果

  6. 今後の展望

ただし、上記の内容をそのまま見出しに記載しても、目次の引きが弱くなってしまう。見出しには、各章で伝えたいメインメッセージを乗せると良い。

MAリード20万件に企業データを付与、メール施策活性化で問い合わせ倍増|株式会社パワー・インタラクティブ

出典:MAリード20万件に企業データを付与、メール施策活性化で問い合わせ倍増|株式会社パワー・インタラクティブ

骨子の段階で編集者とライターで合意を形成しておくと、執筆後の巻き戻しを最小限に抑えられる。

グロースソイルでは、事例コンテンツの企画書テンプレートを公開している。下記のGoogleドキュメントをコピーし、自社の運用に合わせて調整したうえで活用してほしい。

GROWTH SOIL_事例コンテンツ企画書&原稿テンプレート

13. 執筆

作成した骨子に沿って、本文の執筆を進める。

対話型の文調で事例記事を制作する場合、利き手側の質問文はできる限り短く、少なくすると良い。実際の取材では細かくキャッチボールを挟んでいたとしても、記事内では話者の言葉をまとめて記載する。

事例記事を読む読者は、「支援を受けた担当者が何を感じ、どのような成果を挙げられたのか」を知りたがっている。その情報を早く正確に届けるためにも、聞き手の存在は薄めることをおすすめする。

※記事のスタイルとして、聞き手の存在を前面に出すこともある。ただ、BtoB事業における「購買支援コンテンツ」という観点ではそぐわないことが多い

14. 編集

ライターが初稿を作成し終えたら、編集者は以下の観点で編集を加える。

  • あらかじめ指定した顧客課題を解決できることがわかる内容になっているか

  • 自社サービスの必要性が違和感なく伝わる内容になっているか

  • 以下の流れに沿って文章が展開されているか

    1. 導入前に抱えていた課題

    2. 声をかけてもらったきっかけ

    3. 自社を選んだ決め手

    4. 支援開始からこれまでの取り組み

    5. 支援を通じて生まれた成果

    6. 今後の展望

  • 取材時に引き出せたきらりと光る言葉が含まれているか

  • 聞き手の存在が前面に出過ぎていないか

  • 文章がよどみなく流れているか

執筆・編集力は一朝一夕に身につくものではない。何度も記事制作を重ねるうちに、少しずつ力が身についていく。執筆・編集力を高めたい方には、以下2冊を読むことをおすすめする。

おすすめ書籍:取材・執筆・推敲 書く人の教科書|ダイヤモンド社

おすすめ書籍:三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾|CCCメディアハウス

15. 顧客側のチェック

原稿の編集が完了し次第、顧客に原稿を共有する。顧客側は「内容が正しいか」「会社として出して良い内容になっているか」という観点で確認する。

ある程度規模が大きい企業になれば、コンテンツの公開に広報チェックが必要となる。広報チェックが入る場合、1〜3週間の待機が発生することもある。顧客からの修正依頼に対応し、双方が合意した時点で校了となる。

16. ページ公開

校了した原稿を入稿し、ページを作成する。ページ公開前に再度顧客側での確認が必要かどうか、あらかじめすり合わせておくとスムーズに進められる。

ページ公開後、以下4点に対応する。

  • 協力してくれたお客様へのお知らせ

  • SNSやメールでの外部向け告知

  • チャットでの社内向け告知

  • サービス詳細資料・営業資料への組み込み

事例記事は貴重なコンテンツであるため、ページ公開後に届けるための努力も欠かせない。読まれてはじめて、コンテンツは役割を果たす。

事例取材で聞くべきこと

事例取材で聞くべきことは、大きく分けると以下6つ。

  • 導入前に抱えていた課題

  • 声をかけてもらったきっかけ

  • 自社を選んだ決め手

  • 支援開始からこれまでの取り組み

  • 支援を通じて生まれた成果

  • 今後の展望

特に、「導入前に抱えていた課題」と「支援を通じて生まれた成果」を深掘りすると良い。

事例記事の読者は、「自社が抱えている課題にあった支援をしたことがあるのか」「どのような成果が生まれたのか」を気にしている。課題と成果を詳細に聞き出せれば、読者がサービス利用を検討するための有用なコンテンツとなり得る。

顧客の購買を支援する事例記事を作るための要点

顧客から聞き出した内容をもとに事例記事を作るとき、以下4点を意識してほしい。

  • 顧客課題に合ったタイトルをつける

  • 支援内容がわかる見出しをつける

  • エピソードはできる限り具体的に記載する

  • 上手くいかなかったことも隠さず書く

顧客は購買の意思決定材料として事例記事を欲する。そのため、自社が抱えているものと同じような課題を抱えた企業の支援事例を探す。

自社にあった支援事例を見つけやすいようなタイトル付けが肝となる。

また、支援内容のエピソードは上手くいかなかったことも含めて具体的に書くと良い。ある程度の経験を積んだ顧客であれば、何かを変えるプロジェクトが一朝一夕に進まないことは理解している。プロジェクトを進めるなかで壁に直面し、乗り越えるために苦心した過程に触れることで、信頼を寄せることがある。

事例記事は「顧客の購買を支援する」という観点で作る。顧客が購買を検討するうえで重要視していることがわかるような情報を盛り込もう。

事例記事は顧客の安心を生む

事例記事はほかのコンテンツと比べて、制作の負担が大きい。社内での情報収集、顧客の承諾獲得、訪問での取材、執筆後の両社の確認など、通常のコンテンツ制作では発生しないプロセスを経る。

しかし事例記事が潤沢にあると、顧客はサービスの利用を検討しやすくなる。検討に十分な情報を提供できれば、顧客は安心して稟議に臨み、安心して発注できる。

今回解説したプロセスで事例記事制作を進めれば、一定の品質を担保したコンテンツが出来上がる。この機会に事例記事制作に取り組んでみてほしい。

グロースソイルでは、こうした事例記事をはじめとしたナーチャリングコンテンツの企画・制作支援を行っています。自社内での制作にお困りの方は、下記のリンクからサービスの詳細資料をご覧ください。

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この記事の執筆者

株式会社グロースソイル
代表取締役

髙橋 航平

Adobe Marketo Engageの導入支援会社にてコンテンツ編集長を務めたのち、2024年に株式会社グロースソイルを創業。
ナーチャリングに特化して、マーケティング支援サービスを展開。独自のナーチャリングモデル『アクションナーチャリング』をもとに、BtoB企業に顧客指向のナーチャリングを実装している。