インサイドセールスでナーチャリングの重要度が高まっている理由と、実践のポイント
2026/09/01
「ハウスリストからの商談創出数」をKPIに置いたとき、インサイドセールスの活動は顧客に嫌われるやり方へ傾きがちです。
目標を達成するには架電もメールも止められない一方で、続ければ続けるほど顧客から距離を置かれる。それでも毎月の商談創出目標はなくならないので、ナーチャリングというより売り込みに近いことをするしかなくなる。
実際にこうしたジレンマを抱えている方は、少なくないのではないでしょうか。
この状態から抜け出すには、月単位よりも長い時間軸で活動を評価する必要があります。今すぐ商談にならない相手にも時間を使い、価値を提供するといった地道な活動を継続することで初めて、必要になったときに真っ先に声をかけてもらえる関係性を築くことができるのです。
本記事では、なぜインサイドセールスでナーチャリングの重要度が高まっているのかを整理したうえで、具体的に実践したいアクションと、活動を管理するうえで持っておきたい視点を解説します。
インサイドセールスでナーチャリングの重要度が高まっている理由
インサイドセールスの役割は、一般に「購買の見込みが高い顧客をフィールドセールスへ渡すこと」だと語られます。ただ、目の前の商談化数だけを追いかけるばかりでは、「今すぐ商談してほしい」という売り手都合のやりとりに陥りがちです。長期的な事業拡大を目指すなら、日頃からナーチャリングの視点を持つことが欠かせません。
グロースソイルでは、ナーチャリングを「顧客がこちらを向く瞬間をつくること」と定義しています。なぜインサイドセールスにこの姿勢が求められるのか、まずはその理由を見ていきましょう。

アポ獲得を追うほど売り込みになり、リードが離れていく
従来の営業では、「量を追い、そのなかの1パーセント程度を受注につなげる」というやり方が定石とされてきました。しかし、次の2つの背景から、片っ端からアポイントを打診していく方針は成果につながりづらくなっています。
営業アプローチの過剰供給
営業メールやフォーム経由の営業メッセージが大量に送られるようになり、近年はAIによる架電も登場している。受け手側でも電話対応の代行サービスが伸びるなど、そもそも営業を受けない手段が発達している
顧客候補そのものの減少
生産年齢人口の減少に伴い、BtoBの顧客候補となる企業や担当者の数も中長期的に減っていく
このように営業の難易度が高まるなか、売り込みを重ねてネガティブな印象を持たれると、余計に自社の首を絞めることになります。
そのため、量を重視したアプローチには限界があると理解したうえで、一度接点を持てた顧客とは、相手の都合に合わせたやりとりで中長期的に関係を築いていく必要があります。
売上目標の達成には「今すぐ買いたいわけではない顧客」からの受注が欠かせない
毎月課される売上目標は、たいてい「相当に努力してようやく届く」水準に置かれるため、自ら「買いたい」と言ってくれる顧客だけを相手にしては達成が困難です。
かといって、片っ端から連絡して今すぐ買いたい顧客を探し当てるやり方も、前述のとおり通用しづらくなっています。
目標を達成するには、「悩みも関心もあるけれど、今ではない」という顧客を商談へ引き上げることが必要であり、そのためには、購買意欲が高くない段階から継続的に信頼関係を築いておくことが欠かせません。
失注は関係構築の始まりでもある
失注したリードを放置してしまうインサイドセールスは少なくないでしょう。しかし、商談に至ったということは、相手が一度自社に関心を持ち、購買を視野に入れたことを意味します。つまり、失注したリードは、タイミングさえ合えば、買っていただける可能性があった相手なのです。
実際、新規で獲得したリードからの商談化より、失注リードからの商談化のほうが多い会社は珍しくありません。
もっとも、ただタイミングを変えて売り込むだけでは結果は変わりません。顧客が再び自社に関心を寄せるときがくるまで、好印象を保つやりとりを続けながら、再提案のタイミングを見極めることが必要です。こうした活動に地道に取り組めば、相手から声をかけてもらえる可能性も高まります。
インサイドセールスのナーチャリングでやるべきこと
インサイドセールスのナーチャリングでは、個別の顧客と深く関わる役割を活かしつつ、そこで得た情報をコンテンツへ還元し、ほかの顧客にも展開していく視点が重要です。
ここでは、インサイドセールスが注力すべきコンテンツの創出と個別のアプローチについて、それぞれ取り組みのポイントを紹介します。
ナーチャリングコンテンツの創出
インサイドセールスがナーチャリングでアプローチする顧客は、まだ購買意欲が高くない相手です。相手に価値提供できるコンテンツを持たずにアプローチする場合、「商談しましょう」と連絡するしかなく、顧客からすれば求めていない売り込みをされることになります。
こうした事態を避けるために、購買を強く意識していない相手にも喜んでもらえるコンテンツを用意しておくことが欠かせません。
必要なコンテンツは、マーケティングとインサイドセールスで異なります。
マーケティング
大きく集客するためのコンテンツ
インサイドセールス
目の前の相手が抱える悩みに直接答えるコンテンツ
顧客の悩みを起点に企画するという点さえ外さなければ、ナレッジ記事でも資料でもイベントでも、形式は問いません。
作ったコンテンツは、主に会話のきっかけづくりのために活用します。
たとえば、ブログを送って「どうでしたか」と聞けば、電話をする理由が生まれます。イベントに誘えば、「ちょうど悩んでいたので見てみます」と応じてもらえることもあり、より密度の高い会話につなげられます。
個別のアプローチ
コンテンツは作って公開しただけでは読んでほしい相手になかなか届かないものです。そのため、コンテンツをきっかけに、個別に連絡を取るアプローチも欠かせません。ここでは、相手の状態別に連絡のポイントを解説します。

ハウスリストへのアプローチ
企業はハウスリストをつい「自分たちの持ち物」のように捉えてしまいがちですが、相手には、「〇〇社のリストに入っている」という意識はありません。自社の定義上ハウスリストに属しているからといって「一昨年のイベントにご参加いただきましたが、覚えていますか」と電話をしても、迷惑に思われる可能性が高いでしょう。
購買意欲が見えないうちは、相手の時間を売り手都合で奪わないように気を付けてコミュニケーションを取る必要があります。顧客から何かしらのアクション(資料ダウンロードなど)があったときを除き、電話という手段は、むしろ封じてしまってもよいくらいです。それよりも、メールなどの受け手の都合に合わせて受け取れるチャネルを優先的に用います。
送る内容は、これまでの行動履歴や属性、その企業の動きから「こういうことに悩んでいるのではないか」と推測して決めます。特定の記事を読んでいた人であれば、その分野のソリューションに関心があると推測し、「〇〇の支援事例を紹介できればと思い連絡しました」とアプローチする、といったかたちです。メッセージを練る際は、「なぜあなたに、なぜ今連絡したのか(Why you / Why now)」が伝わるようにすることを意識しましょう。
反応があった相手には、そこから個別にアプローチしていきます。
SAL(Sales Accepted Lead)へのアプローチ
SAL(Sales Accepted Lead)の定義は会社によってまちまちです。一般には、マーケティング部門が獲得・育成したリードのうち、営業部門がアプローチ対象として承認したリードを指します。
運用においては、インサイドセールスが一度連絡した後、興味がない相手や連絡がつかない相手をリストから外し、「今は難しいが、ゆくゆくは可能性がある」と判断した相手をSALとするケースをよく見ます。本記事でも、この定義を前提に解説します。
SALは、連絡できる関係性があり、「どんな情報を求めているのか」をある程度把握できている相手です。だからこそ、相手から聞いた悩みを起点にコンテンツやイベントを企画し、「〇〇様から伺った悩みをもとに企画しました」といったように、相手が求める情報をピンポイントで届けることができます。
SALへのアプローチで意識したいのが、個別に聞いた話を、その相手とのやりとりだけで終わらせないことです。聞いた悩みをもとにコンテンツを作れば、その相手とのコミュニケーションが深まるだけでなく、同じ悩みを持つほかの顧客に対して使える手札も増えていきます。
営業担当のなかで、普段からコンテンツの企画にまで踏み込んでいる人はそう多くありません。「何を企画すればいいかわからない」という場合は、SALとの会話を起点に考えてみると取り組みやすいはずです。
失注リードへのアプローチ
失注リードは、何に悩んでいて、どういう要件で購買を検討するのか、といった深い情報まで把握できているリードです。買うに至らなかった理由まで把握できているケースも多いでしょう。今すぐ売り込んでも決まりませんが、チャンスは大きい相手です。
アプローチの方法は、失注した理由によって変わりますが、いずれも買うに至らなかった要因を解消する材料を用意し、それが揃ったタイミングで連絡することが大切です。
他社のサービスを選んだ場合
選ばれなかった要因を解消する材料を用意する(例:導入事例の不足が理由だった場合は、相手の状況に合致した事例が用意できたタイミングで連絡する)
タイミングが合わなかった場合
予算が組まれるタイミングを見計らって連絡する(期の変わり目や、予算編成の3ヶ月前ごろなど)
SALへのアプローチと同じく、聞いた話をコンテンツへ還元していく姿勢は変わりません。違いがあるとすれば、失注リードには「買わなかった理由」が存在することです。その理由を一つずつ解消していけば、「あらためてご検討いただけませんか」と声をかける機会は自然と生まれます。
インサイドセールスのナーチャリングを管理するうえで意識すべきこと
ナーチャリングの管理では、目先のKPIを達成するだけでなく、関連組織と連携しながら長期的に顧客との関係構築を目指していく必要があります。
ここでは、インサイドセールスのナーチャリングで持っておきたい3つの観点を整理します。
時間軸は、少なくとも3ヶ月以上で考える
インサイドセールスの目標を月次で置くと、商談化を急がざるを得ず、相手の都合に合わせたやりとりがしづらくなります。
例えば、来月のイベントに来てもらえれば関係を築ける相手でも、月次目標に追われていると、イベントを差し置いて商談の打診を優先してしまうこともあるでしょう。月次の目標設定こそが、ナーチャリングを阻む諸悪の根源だと私は考えています。
合計で欲しい商談創出数が同じでも、「3ヶ月で何件」「半年で何件」という目標の置き方にすれば、取り得るアクションの幅が広がります。今すぐは商談にならない相手でも、半年後、1年後を見据えてアプローチを継続することで、顧客との信頼関係は築きやすくなります。

とはいえ、実務では「目先の商談をつくる」ことを求められる場面も多いでしょう。その場合は、まず短期の目標を確実に達成して発言権を買いつつ、可能な範囲で中長期の取り組みに投資するのも1つの考え方です。
関連記事:「目先の商談をつくれ」の対処法
フィールドセールスが売上を上げやすい相手を選ぶ
マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスといったレベニュー部門は、それぞれ「次の部門の成果を上げる」ことに注力しましょう。
インサイドセールスがナーチャリングをする際も、自分が話しやすい人・連絡がつきやすい人を対象にするのではなく、次の部門であるフィールドセールスが売上を上げやすい人、すなわち自社の価値を提供しやすい顧客を対象にします。
指標の面では、アポ数だけでなく案件化率をCRM上で追うようにします。「そもそも話すべき相手なのか」「関心が十分に高まった状態でつないでいるか」という観点が持てるようになれば、自然とアポの質に目が向くはずです。「案件化率は自分たちの領域ではない」と切り離して考えないことが、結果的にインサイドセールスの成果を伸ばす近道となります。
マーケティング部門との連携を強化する
顧客にとって心地よいコミュニケーションを取れるかどうかは、相手の役に立てる手札をどれだけ持っているかによります。そして、その手札となるコンテンツを主に作っているのは、多くの場合マーケティング部門です。
部門が分かれると、「マーケティングが必要なコンテンツを作ってくれない」といった不満が出がちです。ですが、ここで大切なのは、インサイドセールスがナーチャリングをするうえで、どんな手札が欲しいのかをマーケティングに対してきちんと伝えることです。
「お客様がこんなことに悩んでいるので、こういうコンテンツを作ってくれたら営業しやすくなる」と依頼する。作ってもらったコンテンツに対する顧客のフィードバックをマーケティングに共有し、改善案や次の企画につなげる。こうしたサイクルを続けるうちに手札が増えていき、やがてどんな顧客と関わっても「そのお悩みなら、すでにコンテンツをまとめています」とその場で返せるようになります。

長期的な信頼が、次の商談を連れてくる
インサイドセールスとしては、目先のKPI達成を求められることが多いでしょう。しかし、毎月の架電数やアポ数といった「今月の数字」だけを追いかけていると、コミュニケーションはどうしても売り手都合に傾き、短期的にアポ数は稼げても、顧客からの信頼は削られていきます。
目指したいのはその真逆の状態です。目先の商談だけにとらわれず、顧客にとって満足度の高い接点を積み重ねる。相手の課題に役立つ情報を、届け続ける。冒頭で触れた「顧客がこちらを向く瞬間」は、こうした取り組みの先にあるのです。
ナーチャリングは、マーケティングとインサイドセールスが連動して動くことで成果が出る活動だと考えています。グロースソイルでは、その全体戦略の設計から、実行を支えるシステム基盤の構築、コンテンツ制作まで一貫してサポートしております。
ナーチャリングの無料相談も受け付けておりますので、お気軽にお申込みください。
この記事の執筆者

株式会社グロースソイル
代表取締役
髙橋 航平
Adobe Marketo Engageの導入支援会社にてコンテンツ編集長を務めたのち、2024年に株式会社グロースソイルを創業。
ナーチャリングに特化して、マーケティング支援サービスを展開。独自のナーチャリングモデル『アクションナーチャリング』をもとに、BtoB企業に顧客志向のナーチャリングを実装している。



