BtoBマーケティングでナーチャリングが重要な理由|業界・企業規模・商材で変わる戦略の立て方とは
2026/09/04
BtoBの購買には、「検討期間が長い」「意思決定に関わる人が多い」といった特有の性質があります。加えて近年は、インターネット上の情報の飽和や営業手法の陳腐化も進んでおり、リード獲得および商談化のハードルは上がる一方です。
こうした状況で売上拡大や新規顧客獲得といった成果を上げるためには、ナーチャリングを通じて、顧客との関係を中長期的に築いていく必要があります。
本記事では、なぜBtoB事業でナーチャリングが必要なのかを整理したうえで、業界・企業規模・商材タイプによって戦略をどう使い分けるかを解説します。
BtoB事業でナーチャリングが重要である3つの理由
見込み顧客との接点を持ち続け、信頼を重ねるナーチャリング活動。こうした活動がなぜBtoBマーケティングで必須なのか、まずはBtoBの購買の性質と近年の傾向について整理します。
理由1|顧客が購買を始めるタイミングは、売り手には読めない
BtoBの検討期間は長く、情報収集から稟議・発注に至るまで、数ヶ月から数年を要することが少なくありません。
加えて、検討が始まるきっかけも、売り手側では予測しきれません。購買のニーズは、期ごとの予算や組織変更、人事異動、突発的なトラブルといった買い手側の事情で発生するからです。
タイミングが読めないなかで売り手側にできるのは、ニーズが発生した瞬間に思い出される確率を上げておくことです。そのために行うのが、良質な情報や体験を提供しながら顧客との信頼関係を築いていく活動、つまり「ナーチャリング」です。
理由2|問い合わせの前に、顧客は情報収集をほぼ終えている
インターネット上には情報が溢れ、調べるという行為は格段に簡単になりました。記事も動画もSNSの発信も豊富にあり、AIを使えば、一般的な情報は概ね手に入る時代です。
実際、株式会社wibが2024年2月に実施した調査では、84%の決裁者が「購買を決定づける情報」を営業担当者との接触前に入手していたと回答しています。
大多数の顧客は、事前のリサーチで「この会社に依頼しよう」と判断できるだけの情報を持ったうえで、問い合わせに踏み切る。この前提に立つと、情報発信をしていない企業は、そもそも競争に参加できていないことになります。その状態ではコンペに呼ばれることすら難しく、呼ばれたとしても、検討の初期から役に立つ情報を提供してきた会社と競り合うのは容易ではありません。
理由3|リード獲得の難易度が上がり続けている
ウェブ上で発信される情報が飽和していなかった時期は、「集客したリードの何%かが商談化し、そこから受注が生まれる」という計算式に沿って施策を組み立てられました。しかし、近年は1件のリードを獲得するコストが上がり続けているうえ、獲得後の商談化率も低下し、以前の目安が成立しなくなっています。
グロースソイルが2025年末に実施した『BtoBマーケティング責任者のナーチャリング実態調査2026』でも、93.2%の方が直近3年間でリード獲得コストが上昇したと回答しています。
リードの獲得や商談化の難易度が上がっている背景には、大きく以下2つの事情があります。
Webマーケティングに取り組む企業の増加
コロナ禍を機に各社がデジタル施策を強化し、1社あたりの発信量も増えた結果、インターネット上に情報が飽和している
営業手法の陳腐化
資料ダウンロード直後の架電があまりに定着した結果、電話に出てもらえなくなっている(AIが電話を一次受けする仕組みも普及しつつある)
こうした状況で、新規リードの獲得だけで目標を達成するのは難しく、既存リードとの関係を深めて商談化を目指す施策の重要性が高まっています。

ナーチャリングに取り組まないBtoB企業に起きること
ナーチャリングをしなくても、目に見える問題がすぐに起きるわけではありません。しかし、気付きにくいところで長期的な損失が生まれていきます。
売り込みをして嫌われてしまう
ナーチャリングという発想がないまま商談数を追うと、獲得したリードに対して、「今から商談しませんか」という売り手都合の連絡を重ねることになります。
獲得したリードの多くは、今すぐ買いたいと考えているわけではないため、売り込みは悪印象につながり、コミュニケーションはますます取りづらくなりがちです。いざニーズが生まれた場合も、ネガティブな印象が先に立つことから、候補にすら入れてもらえなくなる可能性が高まります。
価格競争に巻き込まれる
ナーチャリングで信頼を築けていない企業は、価格を下げる以外に選ばれる理由をつくりづらい状態にあります。
「この会社なら任せられる」という信頼は、商談が始まる前から蓄積しておく必要があります。優れた営業担当者であれば、商談だけで信頼を獲得できる場合もありますが、そうした人材の存在を前提に営業戦略を立てることはできません。
すでに顧客との信頼を築けている競合がいれば、多くの場合、現実的な対抗策は値引きに限られます。値引きによりなんとか受注できたとしても利益は薄くなり、次の投資に回す余力も削られていきます。
成果が資産として残らない
ナーチャリングをしない場合、商談は広告の出稿や営業活動によって生み出し続けるしかありません。しかし、同じ額の広告からは同じ成果しか生まれないため、事業を成長させるには広告費を増やし続けることになり、規模が大きくなるほど収益性は悪化していきます。市場で想起されていない以上、出稿を止めれば問い合わせも止まるでしょう。
ナーチャリングとして顧客に役立つコンテンツをつくり、届け続けることができれば、リードやコンテンツ、顧客からの信頼といった“資産”が残ります。
短期的な数字をつくる活動と、資産を蓄える活動を並行して進めることが、長期的な成長につながると私は考えています。

BtoBのナーチャリング戦略を使い分ける3つの判断軸
ひと口にBtoBといっても、顧客を取り巻く状況や自社の商材タイプによって、有効なナーチャリングの形は大きく異なります。
ここでは、BtoBのナーチャリング戦略を使い分けるための判断軸を、3つに分けて整理します。

①顧客の業界
顧客がどんな形の情報なら受け取りやすいかは、その人の仕事の進め方や生活リズム、情報に触れるタイミングによって決まります。そして、それらを大きく左右するのが業界です。
たとえば、顧客がIT企業であれば、日常的にデジタルで情報に触れることに慣れているはずです。一方で、建設業界であれば、紙の資料のほうが目を通してもらいやすいかもしれません。最終的には決裁者の決断を促す必要があるため、その層が普段どのように情報を受け取っているかまで考えておきたいところです。
このとき、「○○業界の人だから、紙が受け取りやすいだろう」といった憶測だけでアプローチ方法を決めないことが重要です。顧客へのヒアリングを重ねて仮説の解像度を上げ、なるべく正確なイメージをもとに情報の形を設計していきましょう。
②顧客の企業規模
企業規模によって、どのようなコンテンツやアプローチが届きやすいか、意思決定を後押ししやすいかは変わります。
たとえばエンタープライズ企業の場合、次のような傾向が見られます。
意思決定への関与者が多岐にわたる
期中に追加予算を確保する難易度が高く、意思決定がゆっくり進む
購買の失敗が許されないぶん、事前の情報収集期間が非常に長い
情報収集の期間が長いぶん、接点を持ち始めるタイミングも中小企業より早める必要があります。課題が顕在化する前から情報を届け、検討が動き出した瞬間に気付ける状態をつくっておきたいところです。
組織の性質に加えて、担当者や決裁者といった個々の関係者の置かれた状況も考える必要があります。エンタープライズ企業に勤める社員の場合、「ウェビナーは視聴に社内申請が必要で参加しづらい」「営業電話に疲弊していて、気になる資料でもフォーム入力をためらう」といった事情で、特定のチャネルからの情報を受け取りづらいかもしれません。
企業規模によって、顧客から引き出せる予算も、個別対応にかけられる工数も変わります。どのような企業にアプローチしたいのかから逆算して、個別対応と広範囲に向けた情報発信のバランスを考えるようにしましょう。
③自社の商材タイプ
ナレッジ発信がどれだけ力を発揮するかは、商材の性質で大きく変わります。
たとえばコンサルティングサービスは、ノウハウがサービスの質に直結するため、ナレッジを発信する意義が大きい商材です。
一方、人材派遣はサービスの質が会社のノウハウ以上に派遣される人材に左右されるので、「あの会社なら安心して任せられる」という好感を持ってもらうことが想起につながります。
自社の商材は何によって選ばれるのかを考えたうえで、ナーチャリングの戦略を練っていくとよいでしょう。
価値を明確にできて初めて、ナーチャリングは機能する
どんな施策を打てば反応が得られるのか。ナーチャリングを考えるとき、多くの人がこの問いから入ります。しかしその前に、「顧客はなぜ自社を選ぶのか」という理由を考える必要があります。
ニーズのあるサービスには、基本的に競合が存在します。「この文脈であれば、この会社がいい」と客観的に納得できる理由がなければ、どんな施策を打っても、最終的に選ばれるのは難しいでしょう。コンテンツをつくり始める前に、まずは自社の価値がどこで発揮されるのかを考えましょう。
どのカテゴリでなら一番になれるのか、反対にどの文脈では価値を示しづらいのか。それを明確にし、自社の価値に自信を持てて初めて、活動の成果は出てきます。価値が明確になれば、打つべき施策もおのずと定まり、迷いなくナーチャリングに取り組めるようになるでしょう。
グロースソイルは、自社の価値をどこに定めるかという戦略設計から、MA・CRMの実装、コンテンツ制作まで、BtoBのナーチャリングを一貫して支援しています。
15分の無料相談を承っておりますので、「ちょっとした疑問を短い時間で解消したい」という方もぜひご連絡ください。
この記事の執筆者

株式会社グロースソイル
代表取締役
髙橋 航平
Adobe Marketo Engageの導入支援会社にてコンテンツ編集長を務めたのち、2024年に株式会社グロースソイルを創業。
ナーチャリングに特化して、マーケティング支援サービスを展開。独自のナーチャリングモデル『アクションナーチャリング』をもとに、BtoB企業に顧客志向のナーチャリングを実装している。



