いいコンテンツの条件から考える、取材の役割
「いいコンテンツの条件ってなんですか?」
そう問われたとき、皆さんはどんなコンテンツを思い浮かべるでしょうか。
読みやすさ、わかりやすさ、情報の正確さ。 挙げようと思えば条件はいくらでも挙げられる気がします。
コンテンツディレクターとしてあらゆる原稿を拝見するようになってからというもの、「いいコンテンツってなんだろう?」と考えを巡らせる瞬間は何度もありましたが、その答えを一言で言語化するのはなかなか簡単ではありません。
ただ、最近になってようやく1つの答えに行き着きました。
その答えとは、「コンテンツの品質は、そのテーマをどれだけ深く、あらゆる角度から問いを立てて考え抜いたかによって決まる」というものです。
この記事では、私が考えるいいコンテンツの条件を整理したうえで、その条件を満たすのに一役買ってくれる取材の役割についてあらためて考えていきたいと思います。
いいコンテンツは、問いの深さと角度で決まる
テーマについて深く、あらゆる角度から考え抜かれた原稿は、書き手の文章力を問わず、読み応え(あるいは見ごたえ)が出るものだと思います。
まずは「深さ」と「角度」とは具体的にどういうことなのかを整理します。

深く考え抜くほど、コンテンツの密度は高くなる
テーマについて深く考え抜くというのは、問いに対する1つの答えの先にさらに何度も問いを重ねていくことを意味します。たとえば、とある取り組みを行った事実から「なぜそうしたのか」「いつからそうなのか」「そうしなかった場合はどうなったのか」といった問いを投げていきます。関連する情報をかき集めるイメージ、いわゆる深掘りです。
こうした問いを重ねないまま原稿を書くと、情報が足りず記述は浅くなりがちです。
具体例を挙げてみます。
休眠リードを掘り起こすには、定期的な接点づくりが欠かせません。相手の関心に合った情報を届け、自社を思い出してもらうことが重要です。
正論ではありますが、書き手ならではの視点が足りていないため、無難な内容にまとまっています。読者はこのテキストを読んでも、「じゃあ具体的に何をすればいいの?」と疑問に思うでしょう。
同じテーマでも、問いを重ねてから書くとこんなふうに書くことができます。
休眠リードに配信する内容は、過去の商談メモを読み直してから決めています。1年前に「予算が下りなかった」と言われた相手には、費用対効果をまとめた資料を。「他社と比較したい」で止まった相手には、比較検討の観点を整理したコラムを。同じ休眠でも、止まった理由は相手ごとに違います。全員に同じ内容を送ろうとすると、どの理由にも当てはまる無難な内容に寄っていくので、結局どちらの相手も動きません。
この文章は、何を見て、どう判断しているのかが具体的に書かれています。先ほどの例と比較して、読み手が自分の状況に置き換えながら読み進めやすいと思いませんか?
ここまで書くには、配信内容を何をもとに決めているのか、オプトアウトの理由をどう整理・把握しているのか、メールを一斉配信したときに何が起きたのか、といった細部の情報を整理する工程が必要になります。重ねた問いの数は、そのまま記述の具体性につながるのです。
あらゆる角度から問うほど、読者の「知りたい」に近づく
同じテーマでも、問いを立てる角度を変えると見える風景は変わります。角度というのは、誰の立場に立って問いを投げるかということです。
「そもそもこの用語の意味がわからない」といった初歩的なところに疑問を持つ方もいれば、「その方法は自社でも通用するのか」と考える方もいます。読者の立場や状況によって、知りたい情報は異なるため、作り手側にはあらゆる角度からテーマを見つめたうえでふさわしい切り口を見つけることが求められます。
ただ、意識をしない限りはつい自分の思考のクセが顔を出し、ものの見方は知らず知らずのうちに偏るものです。そこで私は、意識的に問いの角度を切り替えるようにしています。
どんな立場から問いを立てるかはテーマによって変わりますが、よく使う軸として次の3つが挙げられます。

習熟度
初めてその言葉に触れる人から見たテーマか、すでに実践している人から見たテーマか。「ナーチャリング」を例にすると、前者には「ナーチャリングとは何か、なぜ必要なのか」といった点から説明が必要ですが、後者が知りたいのは「シナリオを何本まで分けて運用しているのか」といった実務面の話ですポジション
たとえば同じ「収益改善」というテーマでも、営業なら受注率や単価、開発なら開発工数、管理部門なら固定費と、見ている数字が違います。誰の立場から問うかで、扱うべき論点が変わりますスタンス
AI活用のようなテーマなら、推進する側から見た景色だけを並べるだけでは公平性に欠けます。「工数を削減できる」という主張に対して、慎重な立場から「品質は担保できるのか」「社内のリテラシー差はどう埋めるのか」と問いを立てておくと、想定される反論に先に答えられます
3つを行き来しながら問いを立てられると、1つのテーマに対して見える面が増え、読者の疑問に先回りできるようになります。
読者が「そこが知りたかった」と感じるような有益なコンテンツをつくるためには、想定読者が抱きそうな疑問は何かを想像し、それに丁寧に答える必要があるのです。
深さと角度を1人で満たすのは難しい
深く問うことと、角度を変えて問うこと。この2つを1人で満たし続けるのは簡単ではありません。深く考え抜くには時間が要りますし、自分ひとりであらゆる角度から問いを立てるには訓練も必要です。
もう1つ、コンテンツをつくるうえで邪魔になるのが「自分にとっての当たり前」です。人はある物事について一度知ってしまうと、それを知らなかったときの感覚には戻れません。
こうした傾向は、社内のナレッジを発信するときに障壁となります。
日常的に使っている言葉や、部署のなかでは共通認識になっていることほど、読者にとっては説明が必要で、貴重なナレッジであることになかなか気づけない。読者からすれば初めて聞く話でも、書き手にとっては説明するまでもない当たり前の話に見えるため、説明を省略してしまうことがあるのです。
実際にさまざまな原稿を拝見していると、説明が足りないと感じる箇所について書き手は「わざわざ書くほどのことでもない」と感じているケースが少なくありません。
深さと角度を確保する手段として、取材がある
そこで活用したいのが、深さと角度を外から補う「取材」という手段です。
取材は、普段とは違った粒度、角度でテーマについて思考するのにうってつけの機会です。自分では当たり前だと思っていた部分が実は他者にとっては興味深い内容であることがわかることもあります。
また、質問に回答するという行為を通じて、頭のなかに漠然とあった考えが初めて言葉になる、いわばナレッジの棚卸しができる点も取材の魅力です。
ちなみにグロースソイルでは、自社サイトに掲載するコラムの多くを取材ベースで作っています。二次情報を集めて構成する作り方が多いなかでは、手間をかけているほうだと思います。
用意した質問を順番に聞くだけでは、コンテンツに深みは出ない
取材の場では、事前に用意した質問をひととおり聞けばよし、とはいきません。やはりここでも、問いの深さと角度がポイントになります。
最後に、私が普段の取材で工夫していることを2つ紹介します。
場面が浮かぶまで、細部を聞く
取材のノウハウが語られる場では、「一問一答にならないように深掘りをしましょう」とよくいわれます。ただ、取材に不慣れなうちは、具体的にどう問いを重ねればいいのかが今ひとつピンとこないのではないでしょうか。
私は、一問一答を避けて必要な情報を拾うには「頭のなかで絵が浮かぶまで聞くこと」が大切だと思っています。情報に抜け漏れがあると、話し手が語っている場面を頭のなかで映像にできません。逆にいえば、その欠けている情報を集めていけば、コンテンツづくりに必要な材料はおおむねそろいます。
たとえば「ナーチャリング」をテーマにしたナレッジ記事の取材をするとします。「メルマガの開封率が落ちてきたとき、まず何を見ますか」と質問して「件名を見直します」とだけ返ってきた場合、そのままではコンテンツにするには足りないので、絵が浮かぶまで質問を重ねます。件名を見るようになったのはいつからか、それ以前は何を触っていたのか、件名を変えても戻らなかったことはあるか、そのときは何が原因だったのか、判断を変えるきっかけになった案件はあるか、といった具合です。
読み手に情景を思い浮かべてもらうには、まず作り手側が情景を鮮明に思い浮かべられている必要があります。それができていないままでは、執筆の段階で細部を想像で補うことになり、記述はどこかぼんやりしたものになってしまいます。
話し手の様子から、深く問う場所を見極める
絵が浮かぶまで聞くとはいえ、取材の時間は限られています。そのなかで記事の核になる話を引き出すには、どこを深く問うかの見極めが必要です。私はその判断を、話の内容だけでなく、話し手の様子からも探るようにしています。
たとえば、答えが滑らかに出てくるのは、これまでに何度も話してきたテーマだからかもしれません。反対に、言葉に詰まったり、一度言ったことを言い直したりする場面は、本人のなかでまだ整理がついていない証拠でもあります。整理されていないからこそ、まだどこにも書かれていない話が出てくる可能性があります。
そうした様子を手がかりに、用意していた質問の順番を入れ替えたり、その場で問いを足したりする。この柔軟性も、取材者に求められる要素だと思います。
書く前の工程にも、人手をかける価値がある
コンテンツの質についての議論は、書き方や見せ方の話になりがちです。
ただ、書き始める前にそのテーマへどれだけ問いを立てられたかで、原稿に書ける中身はほとんど決まってしまいます。問いが足りていれば読み手にとって有益なコンテンツになりますし、足りていなければ、どれだけ整った文章でも印象に残りにくくなります。
問いを自ら立てるには、技術も労力も必要です。ナレッジは頭にあるのに制作が追いつかない、つくってはいるけれど手応えがない。そうお悩みの場合は、コンテンツ制作のプロの力を借りることも選択肢の1つとなります。
グロースソイルでは現在、記事1本を無料で制作するキャンペーンを実施しています。このキャンペーンでは、実際に取材を受けていただき、そこから記事ができあがるまでの流れを体験していただけます。
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この記事の執筆者

株式会社グロースソイル
コンテンツディレクター
西村 和音
商社で営業・貿易業務を経験後、フリーライターとして独立。ビジネス分野の記事・書籍の取材執筆を数多く手掛ける。2025年1月、株式会社グロースソイル入社。相手のナレッジを引き出す取材力で、事業成長に貢献するコンテンツを制作している。日本インタビュアー協会認定インタビュアー。



