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マーケティングとブランディングの3つの違い

マーケティングとブランディングの3つの違い

2024/07/17

先日、仕事仲間からこう問われた。

「マーケティングとブランディングは何が違うのですか?」

この問いに対し、私は即答できなかった。同じと言えば同じで、違うと言えば違う。絡み合っているといえば絡み合っている。一言で言い表すのが難しい。しかし、マーケティングとブランディングは確かに違う。

前述の問いを受けてから、両者の違いについて学習し、考えをまとめた。本稿では、マーケティングとブランディングの定義、両者の違いについて解説する。

マーケティングとブランディングの定義

マーケティングとブランディングの違いと共通点を理解するには、それぞれの言葉の定義を理解する必要がある。

マーケティングの定義

2024年1月、日本マーケティング協会は34年ぶりに「マーケティング」の定義を見直した。同協会が示した「マーケティング」の定義は以下の通り。


顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。

注1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
注2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
注3)構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。

引用:協会概要|公益社団法人日本マーケティング協会


一方、1990年に制定され、34年間使用されてきた「マーケティング」の定義は以下の通り。


マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。

引用:34年振りにマーケティングの定義を刷新|日本マーケティング協会


「マーケティング」の定義の変化を見ると、マーケティングは顧客のみならず、社会全体との価値共創を目指した活動へと変化していることがわかる。

マーケティングの変化

ブランディングの定義

「ブランディング」という言葉に明確な定義はない。Claudeに問うたところ、以下の回答があった。


ブランディングとは

企業・製品・サービスに関して、ステークホルダーからの信頼や共感を醸成するための活動のこと。


ブランディングは、かつては認知度向上や好感度アップの側面が大きかった。しかし近年は、ブランディングにも収益への影響が求められている。

マーケティングとブランディングの関係

マーケティングとブランディングは、これまでよりも密接な関係になってきていると考えられる。

マーケティングとブランディングの3つの違い

マーケティングとブランディングは近しい関係になってきているが、両者には3つの違いがある。

マーケティングとブランディングの違い

違い1:目的

マーケティングは顧客の購買行動を促進することを目的とするのに対し、ブランディングはステークホルダーのブランドへの共感や愛着を促進することを目的とする。

マーケティングは顧客の購買行動を目的としているため、ROI(投資対効果)を重視する。よって、KPIにはマーケティング経由の受注金額、商談創出件数、MQL件数、リード獲得数など、収益に直結する指標を置くことが多い。

一方、ブランディングはブランドへの共感や愛着づくりを目的としているため、ブランド価値の向上を重視する。よって、KPIには認知度や親近感を評価する指標を置くことが多い。

認知度は新規接触率やアンケート調査、親近感はDWB(Definitely Would Buy)やNPS(Net Promoter Score)などで測定できる。

参考:ブランディングで重要なKPIとは?設定方法・効果測定指標を解説|unname

違い2:主体

マーケティングは”顧客”を中心に据えてに活動するのに対し、ブランディングは”企業・製品・サービス”を中心に据えて活動する。

あらゆるマーケティング施策は、「顧客ニーズ」から逆算して設計する。一方、ブランディングは「企業・製品・サービスがどうありたいか」が先にあり、発信内容は発信者の在り方に準拠する。このような思考プロセスの違いは、マーケティングとブランディングの目的の違いによって起こっている。

マーケティングは「顧客の購買行動を促進すること」を目的としているため、必然的に顧客ニーズにあわせて施策を企画することになる。顧客ニーズに合った情報を提供することで、購買行動を促進できる。

ブランディングは「ステークホルダーのブランドへの共感や愛着を促進すること」を目的としているため、自らがどうありたいかを定義する必要がある。その企業・製品・サービスの根幹にある思想に沿った発信をすることで、その考えに共感した人々が集まってくる。

2024年3月に鹿児島で開催された『ダイレクトアジェンダ2024』にて、中川政七商店会長の中川氏はこう語っている。


一番わかりやすい違いは、「マーケティング=市場起点」で「ブランディング=自分たち起点」であることだと思います。

たとえば包丁屋であれば、どのような包丁が売れるのかを市場に問うて、それを起点とすることがマーケティング的な視点です。一方で、自分たちに包丁屋として何がしたいのかを問うて、それを起点にすべてを組み立てていくことがブランディング的な視点だと思います。その場合、同じ包丁屋でも100軒あれば100通りの目指す世界があるはずなんです。

引用:中川政七商店会長が、あえて「マーケティング」と「ブランディング」を分けて考える理由【ダイレクトアジェンダ2024レポート】|Agenda Note


違い3:対象

マーケティングは”顧客”との関係構築を重視するのに対し、ブランディングは”ステークホルダー全体”との関係構築を重視する。

BtoB事業におけるマーケティング施策の代表的なものは以下の通り。

  • 認知拡大

    オウンドメディア運用

    SNS運用

  • リード獲得

    ホワイトペーパー

    共催ウェビナー

    カンファレンス

    リードシェアメルマガ

    リリース

    Web広告

  • エンゲージメント向上

    ナレッジ記事

    自社単体ウェビナー

    オフラインイベント

    メルマガ

  • 商品・サービス理解促進、商談創出

    事例記事

    事例ウェビナー

    サービス詳細資料・サービス詳細ページ

一方、BtoB企業におけるブランディング施策の代表的なものは以下の通り。

  • コーポレートメッセージ策定

  • イメージキャラクター制作

  • ロゴ作成

  • スポンサード

  • オウンドメディア運用

  • SNS運用

  • イベント開催

  • テレビCM放送

代表的な施策を列挙すると、マーケティングは顧客を対象とした施策が多いのに対し、ブランディングは全ステークホルダーを対象とした施策が多いことがわかる。このことから、ブランディングはマーケティングよりも広義の発信活動を担っていることがわかる。

(ただし、マーケティングとブランディングは互いに近付いており、一概に対象者を分けて考えない方が良い場面もある)

マーケティングとブランディングが融合している企業は強い

マーケティングとブランディングには違いがあるが、両者が完全に分離せず、融合している状態が最も望ましい。

マーケティングを目的として発信するときは「この発信は自社のブランド価値を高めるか?」と問う。ブランディングを目的として発信するときは「この発信は自社の収益に好影響を与えるか?」と問う。

自社のなかでは「これはマーケティングのための発信」「これはブランディングのための発信」と定義していたとしても、顧客には関係ない。受け取ったメッセージを見て、その企業の提供価値やブランドを認識する。

マーケティングとブランディングには強い相乗効果がある。双方が同じ方向を向き、融合していけば、企業の発信はさらに有意義なものになる。

この記事の執筆者

株式会社グロースソイル
代表取締役

髙橋 航平

Adobe Marketo Engageの導入支援会社にてコンテンツ編集長を務めたのち、2024年に株式会社グロースソイルを創業。
ナーチャリングに特化して、マーケティング支援サービスを展開。独自のナーチャリングモデル『アクションナーチャリング』をもとに、BtoB企業に顧客指向のナーチャリングを実装している。