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【イベントレポート】シンプルなルールで「ナーチャリング」を共通言語に。マーケティングとインサイドセールスの連携を強化

【イベントレポート】シンプルなルールで「ナーチャリング」を共通言語に。マーケティングとインサイドセールスの連携を強化

2026/01/23

マーケティング部門がリードの獲得とナーチャリングを進めるも、インサイドセールス(IS)への橋渡しがうまくいかない。マーケティングが実質リード獲得チームとなってしまい、テックタッチでナーチャリングできない。

このような壁に直面するBtoB企業は少なくありません。

では、マーケティングとISが真に連携し、適切に役割分担するためには、どのような戦略と体制を敷くべきなのでしょうか。

この問いに対して実践的な解決策を提示するべく、2025年12月18日、株式会社Maroo、株式会社XAION DATA、株式会社グロースソイルの3社は共催イベント「マーケティングとインサイドセールスナーチャリング分担の最適解」を開催しました。

当日は、インサイドセールス支援の第一線に立つMaroo代表取締役社長の山梨寛弥さん、自社SaaSプロダクトの急成長を支えるXAION DATAマーケティングマネージャーの安部悠希さん、ナーチャリング戦略に特化した支援を行うグロースソイル代表取締役の私岩野航平が登壇。

本記事では、異なる立場からBtoBナーチャリングの最前線に携わる3名が、現場のリアルな課題と、解決への道筋を語り合ったパネルディスカッションの様子をまとめています。

マーケ/IS間で、生み出すべきMQLの認識がそろっていない

—— ナーチャリングにおけるマーケティングとインサイドセールスの連携について、現場では具体的にどのような問題が起きているのでしょうか。

岩野:

現場でよく目にするのは、MQL(Marketing Qualified Lead)の「量」と「質」の両方を高められないという問題です。リード獲得数は目標を超えていても、そこからMQLへと転換する割合が極端に低かったり、逆にMQL目標を達成していても商談につながらなかったり。多くの企業でこの両方の問題が発生しています。

この原因を深掘りすると、MQLの定義が複雑すぎて誰も管理できず、共通言語化できていないということに行き着くことが多いです。

マーケティング部門が育成完了したとしてパスしても、ISが求める「熱いリード」とは乖離があり、現場が困惑する。このような、ボタンの掛け違いが起きているケースは少なくありません。

XAION DATA 安部氏:

マーケティング部門とインサイドセールス部門の間で見ている景色が異なっていることが根本的な問題だと思います。マーケ側は「たくさんリードを渡しているのだから成約につなげてほしい」と主張し、一方のIS側は「ミスマッチなリードばかり渡さないでほしい」と不満を持つ。こういった部門間の摩擦が起きると、両者の会話が噛み合いづらくなってしまいます。

Maroo 山梨氏:
私はインサイドセールスの支援でクライアントと関わる立場ですが、多くの現場でナーチャリングの理論が「神話化」していると感じます。

一般的に、「ハウスリストにメールを送れば自動的に顧客の態度変容が起こり、確度が上がったタイミングで通知が飛んでくる」と、確度が高いリードをどんどん発掘できる魔法のような流れが期待されがちですが、実際にこうした運用ができている現場はほとんど見たことがありません。

マーケティング部門とインサイドセールス部門の両者が一体となってナーチャリングを進めるためには、まず言葉の定義をそろえる必要があります。

Maroo様よりご提供いただいた資料

例えば弊社では、ナーチャリングを「リード管理プロセス上で、サクセスパス(※)からリサイクルパス(※)に移行した、または停滞しているリードに対して、継続的かつ意図的に接点を持ち、顧客が比較・検討のタイミングで“再び選ばれる状態”をつくるための信頼関係を醸成する概念・手段」と定義しています。

注)サクセスパス:受注に向けてリードが順調に進行している「成功への経路」

 リサイクルパス:一度サクセスから離脱・停滞したリードを再循環させる「復活の経路」

岩野:

弊社では、ナーチャリングを「お客様がこちらを向く瞬間をつくりだすこと」と定義しています。顧客の購買意欲は、段階的に累積していくものではなく、常に変動するものです。また、顧客は売り手の都合に沿ってではなく、あくまで自身の事情で動くものです。そういった前提に立ち、顧客の行動に合わせたアプローチを実行する姿勢が何より大事だと考えています。


「頻度」と「深度」の2軸で、多様なアプローチを使い分ける

—— 皆様が自社や支援先のナーチャリング課題を解消するために実践していることを教えてください。

XAION DATA 安部氏:

私たちは「商談につながったか否か」という二元論で終わらせず、商談に至っていないリードに対してどうアプローチを継続できるかを重視しています。例えばメールを送る際も、一方的に送るのではなく「○日ごろにまたご連絡します」と自分たちからお約束を提示します。もし連絡が不要であれば相手から伝えていただけますし、そうでない限りは継続的な接点を持つことができます。このように、弊社では「どういう連絡だったら顧客に喜んでもらえるか?」と、顧客視点に立ちながらフローを整えています。

また、顧客の性質や状況に合わせて最適なチャネルを選べるよう、選択肢を多く持つことも意識しています。商談化の手段として、従来は架電が一般的でした。ただ、2025年12月に株式会社immedioが公開した調査もあったように、電話の自動スクリーニング機能などの影響もあって、今後も通電率は低下していくことが見込まれます。従来のアプローチが通用しなくなるなか、メールやSMS、各種SNSのDMなど、幅広い手段を考えていく必要がありますよね。

Maroo 山梨氏:

安部さんのおっしゃるように、マルチチャネルで接点を持つことは大事だと考えています。

弊社では、顧客へのアプローチ手段を「頻度」と「深度」の2軸で整理しています。「リアルかデジタルか」「テックか人か」の4象限で捉えると、深度が一番高いのは、対面で営業担当が向き合う「リアル×人」の施策です。こうした高コストで深く顧客とつながれるアプローチは重要な場面に絞り、それ以外の局面ではメールのような頻度を保てる手法を採用するなど、施策を組み合わせています。

岩野:

私は「スコアリングを使わないナーチャリングステージ」を推奨しています。

一般的なスコアリングに基づくナーチャリングでは、「この行動をとったら何点加算」と基準を設定して細かく加算していきますが、この方法では顧客が関心を持ってくれているタイミングを逃してしまう可能性があります。

例えば、ある顧客が資料ダウンロードしてくれて80点、その後Webページをいくつか見てくれて20点加算で100点になったから架電、といったケースでは「資料ダウンロードしてくれた時点でアプローチしたほうがよかったのでは」という疑問が生じますよね。そこで弊社では、顧客の行動に応じてステージを4つに分類するステージ設計を提唱しています。

まだ何もアクションを起こしていない状態がStage1、ナレッジコンテンツを利用したらStage2、サービス紹介記事や事例記事を閲覧したらStage3。最後に資料DLや問い合わせがあればStage4とし、これがいわゆるMQLにあたります。

XAION DATA 安部氏:

スコアリングが機能していないのはどの会社でもよく見る状況ですが、どういった点に原因があるとお考えですか?

岩野:

ルールが複雑すぎて「共通言語」にならないのが原因だと考えています。

評価項目が何百もあると、設計者ですら全貌を把握できず、成果を上げるための議論すらできなくなります。そうしたややこしいルールは思い切って取り払い、誰もが直感的に理解できるフレームワークに落とし込むことが大切だと思います。

一般的な組織体制を疑い、マーケティングとインサイドセールスの連携を強化する

—— 最後に、ナーチャリングを強化するための組織体制について、皆様のご意見を伺えますでしょうか。

Maroo 山梨氏:

上流の戦略設計を合理化するためには、顧客の属性分析が有効だと考えています。

一般的なナーチャリング理論では顧客の態度変容を軸としますが、この考え方だと「顧客は自分が欲しいものを理解できていない」という背景を見落としやすいと感じていて。

いわゆるバイヤージャーニーでは、顧客が問題を把握し、課題を整理して、ソリューションを模索し購買の意思決定する、といったように、段階的に思考を進めることが想定されています。ですが、実際の顧客は日々忙しく、自分の問題を引き起こす真因は何か、真因を解消する課題を整理できていないことがほとんどです。

その前提に立つと、行動軸だけで顧客の理解すると真の課題解決にはつながりません。業界や規模といった「企業属性」および部署や役職などの「人物属性」でセグメントを設定し、「この業界のこの役職なら、こうした課題を抱えている傾向が強い」という仮説をもとに戦略の解像度を上げることが大切です。

こうした取り組みをインサイドセールス起点で行えれば、マーケとの連携も首尾よく進み、組織全体でナーチャリングの仕組みを最適化できるのではないかと考えています。

XAION DATA 安部氏:

組織としてナーチャリングを強化するために重要なことは2点あると考えています。

1つは、各施策が最終的に何を目指しているのかを見失わないことです。どの施策も、最終的には売上やLTVといった長期目標を目指して行うもの。各部門のメンバーが目標を強く意識することで、「私の仕事はMQLを生み出すだけ」「商談数を増やすだけ」といった部分最適に陥ることなく、全員が共通のゴールを見据えて動けるようになります。そのためには、PDCAの「P(プラン)」を明確に定め、目標が正しいのか、設計が間違っていないかを常に問い続ける姿勢が欠かせません。

もう1点は、マーケ部門とIS部門がコミュニケーションを取りやすい体制づくりです。例えば、弊社では、インバウンド担当のインサイドセールスをマーケティング部門に所属させ、毎朝30分、リードの状況を細かく共有する時間を設けています。

私自身もマーケティングマネージャーとして、月間数百件あるリードのすべてに目を通し、「どのリードの相性がよく、どこにミスマッチがあったか」を現場から直接フィードバックしてもらっています。

ここまで泥臭く、現場の商談状況や感触をマーケ側が自ら見に行くことで、初めて精度の高い改善プロセスを回すことができるのだと考えています。

岩野:

マーケティング部門は顧客理解が求められる一方で、顧客から遠くなりがちなジレンマがありますよね。

XAION DATAさんのようにマーケ部門とIS部門が密にコミュニケーションを取れると、マーケティング部門側の顧客解像度が上がり、それによってよいMQLを獲得できるという好循環につながりやすくなると思います。

また、CRO(最高収益責任者)のようなハイレイヤーの人を司令塔に置くことで、各部門を統合的に動かす体制を作るアプローチも取るのも1つの手かもしれません。

部門間の連携に課題を抱える企業こそ、一般的に「正しい」とされている組織形態を一考し、自社にとって最もスムーズに情報が流れる体制を追求してみるのがよいのではないでしょうか。

この記事の執筆者

グロースソイル編集部